研究課題/領域番号 |
26560276
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
金子 文成 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (00344200)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 電気刺激 / 神経栄養因子 / 運動 |
研究実績の概要 |
大脳皮質一次運動野の興奮性操作は,脳卒中片麻痺をはじめ,いくつかの疾患に対する有効な治療として期待されている。これまでは,非侵襲的に脳刺激を行う方法である経頭蓋磁気刺激を用いた連発法によって一次運動野興奮性を操作する方法が開発されてきたが,てんかんリスクなど,汎用化するにはリスクが残る点が限界であった。また,電流を付与する方法として経頭蓋直流電気刺激に関する研究もなされているが,この場合には電極を直接皮膚に貼付することから火傷のリスクを完全に消去することは困難である。また,いずれにしても,電源や特定の装置が必要である。 それに対して,近年,健康な被験者の頭蓋に永久磁石を設置することで静磁界を付与し,一次運動野の興奮性を低下させることができると報告された。これまでの報告では,興奮性を低下させることに限定されている。もし一次運動野の興奮性を高めることができれば,治療としての有効利用が現実的になるが,現時点でそのような報告はない。 経頭蓋磁気刺激では,刺激頻度を調整することで,興奮性効果と抑制性効果を誘導することができる。経頭蓋電気刺激の場合には,極性を反対にすることで,興奮性効果と抑制性効果を得ることができる。このように,刺激電流の極性や刺激頻度などのパタンを調整することで,抑制や興奮などの効果を操作できる可能性があるが,永久磁石を使用した研究ではそのような報告はない。そこで当該研究では,電磁石を用いて一次運動野興奮性増大を可能にする方法を確立する挑戦的開発を行なうこととした。具体的には,磁界強度,および 磁界強度を時間変化させる周期を調整することで誘起電流強度を調整し,それによって,一次運動野興奮性を増大させる方法を探索する。磁界強度の時間変化については,0.5-0.1Hz程度のゆっくりとした変化をさせることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,研究第一段階として,永久磁石を使用して静磁界強度を多段階設定し,過去の研究を踏襲した実験を行ない,付与する磁界強度と皮質一次運動野興奮性変化との関係を明らかにすることを目標としていた。さらに,第二段階の研究として,適切な磁界強度で刺激を実施できる仕様で電磁石をオーダメードし,磁界強度をコンピュータ制御で調整することによって実験を行なうことを企画していた。しかし,コスト削減を考えると第一段階の永久磁石を使用して行なおうとしていた実験を,磁界強度をコンピュータ制御する電磁石を用いて実施する方が効率的であると考え,技術者とともに電磁石をオーダメードするための仕様設計に取り組んだ。 平成27年度研究として,結果的に,永久磁石をオーダメードすることとなった。それにより,多段階の磁界強度を設定することとした。その多段階の磁界強度を用いて介入刺激を行ない,皮質脊髄路興奮性に一過性の変化が出現するかどうかを探索する研究に取り組んだ。ただし,多段階の刺激強度の強度設定が適切かどうかを含めて検討することがあり,さらに段階を増やして実験を行なう必要性についても検討を継続している状況である。被験者間で変動はあるものの,永久磁石を用いた介入刺激によって皮質脊髄路興奮性が一過性に変化する現象がみられており,概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては,まずは前年度から開始した研究を継続する。すなわち,多段階の磁界強度,およびsham磁石を用いて皮質脊髄路興奮性の変化を検出するための実験を行なう。その後,刺激強度を経時的に変動させる刺激条件を設定し,積算される磁界強度は一定に保ちながらも,刺激強度に関する経時的変化の有無が興奮性変化に影響するかどうかを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に消耗品を購入する際に,余剰金が発生した。年度繰り越しが可能であるために,無理やり消費することはせずに,繰り越すことにした。特に,計画が妨げられたことなどはない。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度予算と合算して計画通りに使用する。
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