研究実績の概要 |
本研究は立位時の身体動揺を利用して心機能の推定を行なうことが目的である.最終年度は高齢者18名(72.9 ± 3.6歳)を対象に分析を行なった.心機能を推定するために,心筋の収縮によって発生する身体の垂直方向加速度(心弾動図)を収集した.床反力計上で静止立位を60秒間保持する課題を5回行い,その時の床反力垂直成分(Fz)を計測した.具体的処理方法は前年度までの方法を採用して心弾動図のpeak間隔データ(J-J間隔データ)を得た.同期して心電図R-R間隔データを収集して心弾動図による評価値との相関分析を行なった.解析方法は,自律神経機能(LF/HF)と時間領域と周波数領域のPower law(スケーリング指数,FFT power law)を分析した.心電図と心弾動図の相関係数は,LF/HF:0.28スケーリング指数:0.53,FFT power law:0.55となり,心弾動図による心機能の推定値はpower law による精度がやや高い結果となった.特に,FFT power lawの値は0.7‐1.1の範囲となり良好な結果が得られた.さらに高い精度で心弾動図を抽出するためには高齢者のFz周波数成分の特徴である,6‐8Hz付近の高周波成分の除去が必要である.この背景として若年者と比較すると生理的振戦の増加に加えて身体動揺成分が混入することで心拍変動成分(J点)が抽出しにくくなる.高齢者の場合にはこれらの周波数成分の除去方法を検討することで高い精度での心弾動図の抽出が可能になると思われる.
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