研究課題/領域番号 |
26560278
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
高柳 清美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20274061)
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研究分担者 |
金村 尚彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (20379895)
国分 貴徳 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (10616395)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 動物モデル / mRNA / MMP13 / TIMP-1 / collagen type 2A1 / VCAM-1 / COMP |
研究実績の概要 |
膝前十字靭帯(ACL)損傷後に生じる過度な前方引き出しは軟骨変性を促進することから、運動学的視点から異常な関節運動が変形性膝関節症(OA)進行に関連していることが推察される。異常関節運動を抑制することで関節軟骨の変性を予防できるか、ACL切断後の異常関節運動抑制の動物モデルによって検証した。Wistar系雄性ラットをOA群(ACL断裂処置)、関節制動群(ACL断裂処後に関節制動)、対照群の3群とし、1、2、4週時点で膝関節・血清を採取した。 関節制動が軟骨変性に及ぼす影響について、一般染色・免疫組織化学染色を用いた組織学観察・分析、分子生物学的(リアルタイムPCR法、ELISA法)にて解析した結果、2週目時点で関節制動群で、タイドマークの不整、軟骨細胞膨張、軟骨表層の非薄化および剥離の抑制が観察され、大腿骨内側、脛骨内側、脛骨外側の関節軟骨の組織学的変性(OARSIスコア)が有意に抑制された。また、4週目時点で、関節制動によってグリコサミノグリカン蓄積が一部維持された。また、生化学分析では、2週目時点で血清中タンパク質ならびにmRNA発現量において軟骨変性マーカーであるCOMPは関節制動で有意に減少した。 関節制動が急性性軟骨の細胞応答に及ぼす影響について、軟骨細胞数・軟骨細胞面積を算出した結果、急性期の細胞反応の違いを検証した結果、関節制動が1週目時点で軟骨表層でのクラスター化を一部抑制し、軟骨中間層でMMP-13陽性細胞が減少した。また、軟骨細胞の占める面積が軟骨表層・中間層で制動群に比較して有意に広く、細胞外基質の面積が減少した。 これらのデータは、異常な関節運動の制動には関節軟骨の変性が抑制できる効果を有していることの根拠となり、関節制動は急性期の軟骨細胞クラスター化の抑制や膨張といった細胞応答に変化を与えている。免疫組織化学染色については、現在も解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、「関節制動モデルの膝関節軟骨組織の短期的な変性過程の検証」について、検証を実施したが、一定の見解を得られている。その結果は6月の9th World Congress of the International Society of Physical and Rehabilitation Medicine、9th World Congress of the International Society of Physical and Rehabilitation Medicineに発表予定である。また、来年度の研究モデルも作成しており、「関節制動後の長期飼育による関節軟骨へ及ぼす影響」についての準備も既に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、OAの進行抑制が長期的な軟骨抑制効果を及ぼすのか検証することを目的に、長期間飼育した場合の軟骨変性過程を組織学・免疫組織化学的手法によって解析する。昨年度のデータを参考に、タンパク質分解酵素(MMP-13, ADAMTS4,5)、細胞肥大マーカーであるコラーゲンX型、炎症関連因子TNF-αやIL-1b、アポトーシスについて継時的に検証を行う。しかしながら、OAは比較的早期に生じることから当初の長期飼育期間6ヶ月から1ヶ月ならびに3ヶ月に変更し、研究を推進する。また、動物の週齢を若齢(12週齢)から壮年齢(6ヶ月齢)に変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度計画していた学会発表が1つリジェクトになった
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の学術大会で発表を採択されたので、この費用に充てる。
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