研究実績の概要 |
膝前十字靭帯損傷に伴う関節不安定性は、軟骨変性を進行させる要因である。故に、変形性膝関節症の予防法のひとつとして、膝周囲靱帯損傷に伴う異常なメカニカルストレスを減少させる措置が必要である。申請者らはその異常な関節運動を関節包外から制動するモデルに成功した。このモデルが変形性膝関節症の発症を予防する一手段となり得る可能性を検証した。 6か月齢のWistar系雄性ラットを, ACLを外科的に損傷させた脛骨の前方引き出しが過剰に生じている群(ACLT: Transection群),外科的にACLを損傷させた後,脛骨の前方引き出しを制動した群(CAJM: Controlled abnormal joint movement群),外科的手術を行わない通常飼育群(CTR: Control群)の3群に分類した。解析時期は, 術後4および12週目に解析を実施した。 軟X線撮像における検証では, 術後12週時点において,ACLT群で脛骨および大腿骨の辺縁部の透過性が低下し,関節裂隙の狭小化を認めた。関節軟骨組織像では,ACLT群の関節軟骨厚の減少,表層のフィブリル化,グリコサミノグリカンの染色性が低下し,関節軟骨の変性が著しく重症化した。また, 異化因子や炎症関連因子はACLT群で増加した。一方で、アグリカンやバーシカン、Ⅱ型コラーゲンなどの同化因子においては、特異的な発現の差は認めなかった。 以上の結果より,関節不安定性の制動することで軟骨の変性を遅延させたことは、軟骨変性に対して運動学的異常がメカニカルストレスとなり、膝関節軟骨の変性を進行させる一因であることが示唆された。
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