研究課題
前年度の、小動物モデルにおいて異なる力学的ストレスを付与したラット棘上筋の筋・腱に対する生化学的解析・筋自体の組織学的解析においては、メカニカルストレスの違いが明確には観察されなかったが、今年度実施したEnthesis部の組織学的解析では、線維軟骨層全体における非石灰化線維軟骨層および石灰化線維軟骨層の割合を算出したところ、遠心性収縮を負荷した群で、他の2群に比べ石灰化線維軟骨層の割合増加が観察された。統計学的有意差は見られなかったものの、群間に構造的な違いが観察されたことから、Osgood-Schlatter病のようなEnthesis部疾患においては、筋収縮様式の違いが疾患発症に寄与している可能性が示唆された。また、今年度は当初の計画通り、ヒトを対象とした運動学的・運動力学的研究も実施した。体幹のアライメントを直立位、通常(軽度前傾)位、前傾位の3条件とし、そのままのアライメントのままスクワット動作を行った際の下肢3関節の運動力学的データおよび筋活動データを計測し解析した。結果として、体幹のアライメント条件の変化に伴い、膝関節周りのモーメントデータは大きく変動したが、膝関節周囲筋の筋活動データには一定の傾向性は認めるものの、統計学的な違いは見られなかった。すなわち、スクワット動作時の体幹のアライメント変化は下肢関節の力学的パラメータに変化を及ぼすものの、活動する筋群の関係性には大きな影響を及ぼしていなかった。膝関節周囲筋の多くが2関節筋であることを考慮に入れ、本研究結果を解釈すると、体幹条件の違いは、各筋間で負荷量に違いを及ぼすわけではなく、各の活動時における筋の長さ変化に影響を及ぼすことが明らかとなった。以上の研究結果から、Osgood-Schlatter病のようなEnthesis部疾患においては、単純な負荷量以上に、活動時の筋長が影響している可能性が示唆された。
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American Journal of Sports Medicine
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