研究実績の概要 |
最近発見した排便反射を促進する作用を有する低分子化合物5-HT4刺激薬、クエン酸モサプリドが腸壁内神経系促進剤として用途特許(5089556号)を取得した。そこで、他領域に渡る神経の再生・新生作用の可能性とその作用メカニズムの解明をし、その制御の可能性を可能にするための基盤となるエビデンスを得ることを目指した。 本研究では、軽度の脊髄損傷ラットモデルにおける損傷した脊髄神経の再生・機能回復をクエン酸モサプリドがもたらすかどうかを検討するため、引き続き、下肢の運動障害を起こすが、排尿機能障害までは起こさない軽度な脊髄損傷モデルラットの作成をめざした。脊髄損傷を与える方法は基本的にはSaruhashiら(Arch Orthop Trauma Surg 129: 1279-1285, 2009)の論文を参考に、動脈瘤クリップ(150g)による圧迫によって行った。 圧迫刺激を3-10秒間与えて下肢麻痺と歩行障害がどの程度起こり、どの程度で回復してくるかを観察した。 その条件を探るために、圧迫刺激を与えた後の脊髄を摘出しホルマリン固定後組織学的検索を行い、さらに綿密に圧迫刺激の条件を検討した。しかし、動脈クリップでの圧迫刺激では適切な軽度の脊髄損傷ラットモデルをコンスタントに作成することは困難であった。 そこで、なんらかの方法で、クエン酸モサプリドが脊髄神経の再生を促すかどうか調べるために、マウス脊髄の後根神経節細胞を摘出して培養し、その培地にクエン酸モサプリドを加えて神経突起の数を増加させるかどうかも予備的な検討を行った。 その結果、さらなる研究が必要ではあるが、有望と思える結果が得られている。
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