研究課題
我々は、27年度までに、1. 末梢神経刺激(Ia群線維への連続刺激)によってあらかじめ脊髄神経回路網を賦活化し、2. その間、脳内で運動イメージを想起するだけで、円滑な反射性運動を発現させる運動訓練法を開発した。そこで、本年度(28年度)は、当該訓練後、実際の随意運動発現に対し、どのような変化を及ぼすのか、について検討を加えた。低強度の電気刺激(運動閾値の0.5-0.7倍、3 Hz)を脛骨神経に与えると、極めて小さいヒラメ筋単シナプス性反射の単収縮力の連続が観察できる。その間、被験者は、眼前のランプ型視覚フィードバックを手掛かりに、足関節運動を脳内でイメージする(100試行を繰り返すトレーニング課題)。トレーニング序盤、ほとんど運動を引き起こすことはできないが、試行錯誤ののち、円滑な反射性運動(ランプ型運動)を生起させることができる。今回は、そのトレーニング前後に、視覚追従型の随意運動(足底屈運動、ランプ型)を行わせ、実際の力軌跡がどのように変化するのか、検討した。その結果、トレーニング後、ランプ型運動の軌跡動揺は明らかに低下し、標的との誤差(標的と実際の力軌跡の差)も有意に減少した。対象実験として、自ら足底屈運動を100回繰り返すトレーニング後の効果(随意運動によるトレーニング効果)も測定したが、その軌跡動揺の変化は、両課題で類似した傾向が確認された。これらの結果は、当該訓練法が、1. 随意運動発現に影響を与え、2. 実際に“運動を行うことなし”に、その後の随意運動の軌跡動揺を減弱させる効果があり、さらに、3. この効果は随意運動の繰り返しによるトレーニング効果と類似すること、を示すものである。よって、運動遂行が困難な場合においても、当該手法は、少ない下行性指令(運動イメージ)と末梢神経刺激の連続によって、随意運動の再学習を促すことができる可能性があると考えられる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Frontiers in Human Neuroscience
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