本研究は,炎症反応と骨格筋の萎縮・肥大を調節する基盤メカニズムの関連について解明することを目的とする.炎症反応が,萎縮・肥大と真逆なそれぞれを促進すると考えられ始めた.断片的な報告はあるものの包括的な理解には至っていない.同じような炎症メディエーターが,それぞれで異なる動態で働くと想定する.萎縮予防のように両動態が払く場合についても着眼する.そこでマウス骨格筋の廃用性萎縮,負荷運動による萎縮予防・肥大について,炎症反応,萎縮・肥大を制御する分子シグナルの動態を明らかにして,その関連性について検討することを目指す. 廃用性筋萎縮モデルである尾部懸垂飼育では,後肢の大腿四頭筋,大腿二頭筋,腓腹筋,ヒラメ筋,足底筋,長趾伸筋が萎縮した.肥大モデルである後肢下腿共同筋腱の切除では,停止腱を切除した腓腹筋は萎縮して,温存されたヒラメ筋や足底筋は肥大した.この肥大が長時間の強烈な過負荷によるため,通常の運動による肥大モデルも導入・確立した.階段を昇らせることで自重を活用した後肢の上・下腿筋のトレーニングを実施した.これにより大腿四頭筋,大腿二頭筋,腓腹筋,ヒラメ筋,足底筋,長趾伸筋が肥大した.運動により萎縮予防モデルとして,尾部懸垂飼育中に階段昇りを実施した.惹起されるはずの萎縮が,大腿四頭筋,大腿二頭筋では抑制され,腓腹筋,ヒラメ筋,足底筋では緩和された.これらの廃用性筋萎縮,運動による肥大,運動による萎縮予防について実験期間にわたるタイムコース・サンプルを作製し,主にマクロファージに関する解析を進めるも,実験群間における顕著な違いが検出されなかった.さらに,電気刺激を活用した培養筋細胞の肥大・萎縮モデルを導入・確立できた. 本課題でメカニズム解明に必要な動物,及び培養細胞モデルが確立できた.より詳細な調査を進める体勢を整えることができた.
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