研究課題/領域番号 |
26560291
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
佐浦 隆一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10252769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 痙縮 / ボツリヌス毒素療法 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
ボツリヌス毒素を用いて中枢性神経障害による痙縮を抑制することにより、脳や脊髄組織にどのような変化が生じ、また、脳および中枢神経系の可塑性に与える痙縮の影響と脳血管障害や脊髄損傷の後遺症である痙性麻痺を軽減、回復させることができるリハビリテーションの可能性を探索することを目的に、脳血管障害患者にボツリヌス毒素療法を痙性麻痺の軽減と回復の度合いを評価した。 臨床的評価を用いて測定したところ、ボツリヌス毒素の投与により脊髄損傷および脳血管障害による痙性は、明らかに軽減した。また、ボツリヌス毒素療法単独よりもボツリヌス毒素療法に、装具療法や歩行訓練の追加・併用、日常生活動作訓練を中心とした作業療法を組み合わせることにより、疼痛、歩行能力などの下肢機能、更衣・整容などの上肢機能の明らかな臨床的改善を認めた。さらに、評価表を用いた社会活動への参加を含む生活の質(QOL評価)と抑うつ尺度などを用いた自己満足度の評価も、ボツリヌス毒素療法単独よりもボツリヌス毒素療法にリハビリテーションを併用することにより、臨床的な改善効果が認められた。 一方、MRI画像による評価は、発症直後および経過中と比較しても、ボツリヌス毒素療法単独およびボツリヌス毒素療法にリハビリテーションを併用しても画像上の変化はみられなかった。さらに、ボツリヌス毒素療法の実施症例数を増やして評価を継続したが、機能評価は良くなるものの、画像診断上の変化を確認することはできなかった。 以上、ボツリヌス毒素療法とリハビリテーションの併用による画像診断上の中枢神経系の可塑性を示す所見を得ることはできなかったが、臨床面、機能面からは脳および中枢神経系の可塑性を改善する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ボツリヌス毒素の投与により痙性は明らかに軽減したが、ボツリヌス毒素療法単独とボツリヌス毒素療法に装具療法や歩行訓練の追加、日常生活動作訓練を中心とした作業療法を組み合わせた群などの無作為化比較試験が実施できず、得られた患者群の中での少数の症例群の比較(観察研究)となっている。ボツリヌス毒素療法およびリハビリテーションとも実際に臨床場面で行われる治療であり、被検者となる患者から無作為化試験への参加の同意が得られず、症例数の蓄積に難渋し、結果的に後方視的な観察研究となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
選定条件に基づいてボツリヌス毒素療法単独、リハビリテーション単独実施群、ボツリヌス毒素療法にリハビリテーションを併用した群などが比較できるように、ボツリヌス毒素療法の実施患者数を増やすように努力する。実施患者が増えることにより、無作為化は難しいが、比較する群ごとの患者数が増えて、統計学的に意味のあるデータが得られる可能性が高まる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ボツリヌス毒素療法およびボツリヌス毒素療法とリハビリテーションを実施して群間で比較検討できた患者数が少なく、消耗品の使用が年度内の計画よりも少なかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に向けて、ボツリヌス毒素療法およびボツリヌス毒素療法とリハビリテーション実施群などの群間比較ができるように患者数を増やし、消耗品などの使用を年度内の計画にあわせる予定である。
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