高齢者における医療費および介護保険費用を適正化するためには、生活習慣病予防を中心とした疾病予防だけでなく、健康寿命延伸のための介護予防を考慮した健康作りが必要とされ、身体活動の促進が大きな役割を担っている。高齢者の身体活動において最も一般的な活動は歩行であるため、より直接的に身体活動を向上させるためには歩行に着目して介入するべきであるが、ウォーキングを運動として勧めたり啓蒙的活動をするだけでは身体活動増進に大きな効果は得られにくいとされている。つまり、歩行能力と身体活動との関係性に基づいた評価、介入が求められていると考えられる。そこで、本研究の目的は、高齢者における「身体活動」と「歩行」について、各々定量化指標を用いて両者における相互関係性をモデル構築により明らかにすることとした。本研究は、モデル構築のために地域在住高齢者を対象に調査を行った。身体活動においては、加速度計内臓の活動量計により活動量、運動強度を定量化した。歩行については、疫学フィールドでも測定可能なwearableセンサーを用いて解析を実施した。周波数解析ならびに関数分析を行うことで、歩行速度だけでなく歩行のばらつきに関する指標や安定性をあわせて評価した。これらの指標により歩行の定量化された質と身体活動との関係性が示唆されたが、モデルの当てはまりの程度を考慮すると、本研究では測定していない介在因子の検討が今後必要であると考えられる。
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