研究実績の概要 |
(目的)我々は新たな概念に基づき骨盤サポート付き車いす(NW) (A. Ukita, T. Hatta. et al, 2015) を開発した。高齢者の頚部運動 (N. Sawada, T. Hatta. et al, 2015)、長時間座位(H. Goda, T. Hatta. et al, 2015)、片麻痺者(八田他,2015)の研究にて、NWの頭部前方位姿勢(FHP)の改善を示した。本研究課題ではFHPの改善が呼吸へ及ぼす影響を調べた。健常者23名では標準型車いす(SW)に比べ、NWではFHPの改善とともに一回換気量(VT)の増加があった。一方、呼吸数(Rf)の減少があり、VTとRfは代償関係がみられた。本年度は片麻痺患者(12名)でSWとNWの比較を行った。(方法)対象は片麻痺高齢者(左麻痺9名、右麻痺3名)、年齢は81.8±6.4才、身長は157.2±10.6cm、56.4±8.1kg、要介護度は3.8である。VT、Rf、酸素摂取量(VO2)、二酸化炭素排出量(VCO2)を呼吸代謝システムCPET(COSMED)にて計測した。姿勢は、麻痺側及び非麻痺側から動作分析装置ダートフィッシュにて計測した。(結果)VTはNWとSWそれぞれ0.38±0.2lと0.4±0.2l 、Rfは19.1±5.3回と17.3±4.0回と差はなかった。VO2、VCO2も差はなかった。NWはSWに比較し、頭部非麻痺側を除いてすべて有意で、FHPの改善があった。麻痺側と非麻痺側はNWの頚部角度を除き差がなかった。(考察)片麻痺者でもNWでFHPは改善したが、呼吸では健常者のような差がなかった。高年齢や麻痺による胸郭や腹部の柔軟性のなさや運動制限の影響が考えられた。ただ、要介護度が高く円背が強い例ではNWによってVT、Rf、VO2は大きく改善した。NWは重症例に有効である可能性が示された。
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