研究課題/領域番号 |
26560299
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡邉 高志 東北大学, 医工学研究科, 教授 (90250696)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 健康 / 福祉 / リハビリテーション / 慣性センサ / トルク |
研究実績の概要 |
まず,剛体リンクモデルから導出した運動方程式により関節トルクを算出する方法として,頭部に外力が作用しないと仮定して床反力に相当する計測を排除し,かつ,慣性センサによる身体各部の角度計測から各部位の運動時の重心加速度を算出して3次元動作解析装置での計測を不要にする方法を検討した.各部位の重心位置に関する情報は,身長及び体重の情報から推定する方法を採用し,角度計測は,慣性センサの信号にカルマンフィルタを適用する方法を利用することとして,関節トルク算出法をプログラム実装した.本手法の実現可能性に関する基礎的な試験として,3次元動作解析装置で計測した健常者の起立動作,スクワット動作をもとに,重心情報計算で利用する部位データの決定,トルク算出の従来法と提案法との比較を実施した.これにより,本手法でのトルク推定の実現可能性を確認し,さらに,生じる誤差の要因の絞り込みを行った.また,この誤差原因について検討するために,慣性センサと従来計測法での同時計測を行える実験システムの構築を進めた. 次に,車いす駆動時の上肢3次元運動を慣性センサで計測する方法に関して,前記の下肢運動と共通するので,慣性センサで3次元運動を計測する方法を構築し,剛体モデルで計測精度の検証を行った.動作速度が速いと誤差が増大する傾向があったが,概ね5%以下の精度で位置変化を計測可能であることを確認した.また,University College Londonの研究グループと,実環境に近い平地や傾斜路での車いす駆動時の運動計測を,スマートホイールを搭載した車いすで計測する実験を設定できたので,慣性センサシステムとの同時計測を共同で行った.車いす駆動時の上肢の3次元的な運動を肘位置の移動軌跡として解析した結果,平地と急斜路で上肢動作が異なることを定量的に計測可能であった.この動作の違いは妥当と考えられ,さらに詳細に検討を進めることにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
剛体リンクモデルから導出した運動方程式により関節トルクを算出する方法について,プログラムを実装し,3次元動作計測装置による健常者での計測結果に基づいて原理的実現可能性を確認できた.また,本研究で提案する方法によるトルク推定での誤差の原因の絞り込みができた.この誤差原因を詳細に検討し,解消することができれば,慣性センサによる関節トルク推定法の原理を確立できると期待される. 車いす駆動時の上肢運動計測に関しては,慣性センサによる3次元的な運動計測の利用可能性を確認できた.これは,前述の関節トルク推定にも応用可能である.また,University College Londonとの共同実験を実施し,実環境に近い複数の異なる路面での車いす駆動時の上肢運動を計測できた.この結果から,実験系の検証を行うことができ,さらに評価の着目点について議論する情報を得ることができた.ここでの結果は健常被験者で計測したものであるが,上肢のパワー推定法の妥当性検証には利用可能である.さらに車いすユーザでの計測を実施して,方法を検証することで,慣性センサによる車いす駆動時の上肢運動の定量評価が可能になると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
剛体リンクモデルから導出した運動方程式により関節トルクを算出する方法については,慣性センサと従来計測法で必要となる3次元動作計測装置と床反力計との同時計測を行える実験系を構築し,誤差要因の実験的検討と解決法の検討を行う.基本的には構築できているが,複数機器間の同期とサンプリング周波数の不一致の問題が新たに生じたので,速やかに解決し,同時計測実験を推進する. 車いす駆動時の上肢運動計測については,健常被験者で,実環境に近い路面での車いす駆動時の上肢運動計測を行い,データを収集した.運動評価について,慣性センサによる3次元運動の計測は可能になり,肘位置の移動軌跡として上肢の3次元的な運動を解析できたので,これを利用し,上肢発生パワー推定の実現可能性を検証する.そのためのアルゴリズム実装を進めるとともに,実験データを解析する上で,慣性センサシステムとスマートホイールシステムとのデータ同期解析が必要になる.同期のための参照信号は計測しているので,その利用可能性を検証し,同期解析プログラムを構築する.これについては,University College Londonの研究グループと共同で進めている.
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