研究課題/領域番号 |
26560300
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
新関 久一 山形大学, 理工学研究科, 教授 (00228123)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 足圧中心 / 随意的制御 / 足関節角度 / 位相同期 / 加齢 |
研究実績の概要 |
昨今,高齢者人口の増加に伴い高齢者の要介護者が急速に増加しており,その要因の一つとなる加齢による運動機能の低下を防ぐことが医療,保健分野で喫緊の課題となっている。運動機能の低下を予防するためには日頃から自己の身体特性を把握し,転倒などを予防する心構えが必要である。しかし,個人の易転倒性や立位バランス能力を定量的に評価できる指標は確立されていない。本研究では随意的な足圧中心(CoP)の移動課題を通して立位バランス能力評価を行うシステムの開発を行った。前年度の研究結果からCoP移動課題の目標周期は6秒,振幅はセンササイズの20%(7 cm)が妥当であると推察され,今年度は周期と振幅を固定して計測を実施した。また,CoP移動課題時の足,膝及び腰の関節にマーカーを貼付し,ビデオ撮影を行って関節角度の解析を行った。 若年健常者32名(平均年齢22.2±1.1)と中高年者23名(年齢62.1±3.3)で測定を行ったところ,目標とCoP間の位相コヒーレンス(λ)は中高年者で有意に低く(P<0.05),また目標振幅との差(Δν)も中高年者で有意に減少していた(P<0.05)。また,これら2指標の3分間の変動係数は中高年者でより大きかった。関節角度の解析から足関節角度の振幅が中高年者で有意に小さかった(P<0.05)ことから,中高年者でΔνが減少する理由として足関節の柔軟性が低下しており,前後方向に重心を移動したときの安定性限界が小さくなっていることが示唆された。λとΔνおよびこれらの変動係数の4指標で主成分分析を行ったところ,第一主成分と第2主成分で88%の累積寄与率が得られた。中高年者は若年者と比較してλとΔνの変動係数が大きいことが特徴であり,また,第一主成分を決定する係数の中でΔνの係数が最も大きいことから,Δνが両群を判別する主要な指標となっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は昨年度の研究結果を踏まえて実験プロトコルをフィックスし,若年層32名と中高年者23名の被験者で比較検討した。目標とCoP間の位相コヒーレンスと振幅差から中高年者の特徴を判別する関数を誘導し,また,足,膝および腰関節の角度を解析して中高年者のCoP制御の特徴を考察した。得られた研究成果について3件の学会発表(27年度2件,28年度1件予定)を行い,論文は本研究と関連した研究で1報発表した。現在,1報執筆中である。しかし,被験者の年齢層がまだ十分広くはなく,とくに70代以上の被験者数を増やす必要がある。本研究計画は27年度に終了予定としていたが当初の予定から若干遅れていると判断し,1年繰越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は1年の期間延長を申請し認められたので,さらに被験者の年代層を広げるとともに被験者数を増やして解析する予定である。現在,中高年者の被験者として50代から70代前半の年代層で検討しているが,70代後半や80年代の被験者をリクルートし,若年者,中高年者,後期高齢者で分類して判別分析を実施する予定である。本研究で提案する立位バランス評価法はゲーム感覚で行うことができるのが特長であるが,評価時間は短いことが望ましい。実用化するためには解析時間をどの程度まで短縮できるか,今後検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果に関して関連する論文を2報発表する予定で研究を進めたが,1件は研究期間内での発表はできなかったため,論文の英文校正料や投稿料,論文別刷代などが未使用となった。また,1件の学会発表が次年度に持ち越したため,学会参加費や旅費が未使用となった。論文発表に関しては,研究代表者の所属専攻の専攻長としての業務が増えたため,研究に割く時間が確保できなかったのが主要な要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
関連する論文の英文校正料と投稿料,別刷代として使用するとともに,2016年4月に開催される第55回日本生体医工学会大会(於富山)で発表が受理されており,学会発表のための旅費として使用する予定である。また,残額の一部は被験者謝金として使用する。
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