研究実績の概要 |
本研究の目的は,個人が立位バランス能力や易転倒性を簡便に自己評価できる手法を提案することである。今年度は1年間の期間延長を申請して被験者の年代層を広げ,計測例数を増やした。若年健常者15名と中高年者15名を新たに追加し,足圧中心(CoP)移動課題の周期と振幅の組み合わせを3種類設定して計測した。被験者は周期4秒と振幅がセンサ幅の15%(T4),周期6秒と振幅20%(T6),周期8秒と振幅25%(T8)の3種類の足圧中心移動課題を遂行した。同時に足関節,膝関節,腰関節のモーション分析を行い,足関節と腰関節の搖動範囲を求めた。 いずれのプロトコルにおいても追随目標と被験者CoP間の位相コヒーレンスは若年者に比べて中高年者で有意に低く,追随目標に対する搖動(sway)振幅も中高年者で小さかった。また,位相コヒーレンスとsway振幅の変動係数は中高年者で有意に大きかった。若年者ではswayの振幅と足関節および腰関節の間には相関が認められなかったが,中高年者ではT6とT8プロトコルにおいてsway振幅が小さい被験者ほど足関節の角度変化が小さく,腰関節の角度変化が大きかった。これらの結果は,中高齢者では足圧中心移動課題に対する追随性が低く,足関節の可動域が狭くなっているため,安定性限界が縮小していることを示唆する。 位相コヒーレンスとsway振幅ならびにそれらの変動係数の4つの指標を基に主成分分析を行ったところ,第1,2主成分で96%の寄与率が得られた。さらに第1,第2主成分を基に判別分析を行い,若年者群と中高年者群を分別する楕円関数を導出した。若年者群の領域からの中高年者の個々の点の距離を求めると,年齢に比例した正の相関が得られた。足圧中心移動課題で得られるこれら4指標により,立位バランス能力を自己評価できる可能性が示唆された。
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