研究実績の概要 |
「研究の目的」円柱物体を安定して把持する際に必要となる母指(pulp、爪)の非対称性を解明する。pulpとは柔軟性に富んだ組織であり、脂肪や血液などから構成される。これを電動義手などの母指構造へ応用すれば、より安定した把持が可能となる。H26年度の目標は、大きさの異なる物体を把持した際の母指爪ひずみの計測ことである。 「研究実績」被験者として,右手の母指指節間関節より遠位部位および爪に外傷や疾病が確認されない日本人男性30人(全員右利き、20~26歳)を選出した.2軸交叉ひずみゲージを被験者の母指爪表面上の3箇所に貼付した.把持物体(材質:アクリル樹脂)の形状は,円柱,球,平板の3種類であった.円柱直径は50, 60, 80, 100, 120mmとした.球直径は60, 100, 150, 200mmとした.平板厚さは1, 10, 50, 100mmとした.母指IP関節遠位の指腹部と把持物体との間に圧力センサシート(厚さ0.46mm)を挿入することによって,母指による押し付け力を計測した.押し付け力は,円柱把持の場合,10, 15, 20Nと,球および平板把持の場合,10Nとした.被験者には物体を把持した後に,規定の押し付け力を30秒間保持してもらい,その間の爪ひずみと押し付け力を計測した.サンプリング周波数は1000Hzであった.全ての物体把持において、橈尺方向に母指爪ひずみの非対称性が発生した。さらに、把持物体のサイズが小さい場合、例えば円柱直径が小さい場合、指軸および横断軸方向の両方のひずみに非対称性が発生したが、把持物体のサイズが大きくなると、どちらかの方向に有意差が見られなくなった。母指押し付け力が増加すると、尺側のひずみは増加するが、橈側のひずみは変化しなかった。本研究において、物体把持における母指爪ひずみを計測した結果,橈尺方向の非対称性が観察された。これは、母指指腹部尺側面が主要な接触面であることに起因すると考えられた。
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