「研究の目的」円柱物体を把持する際に必要となる母指爪の非対称性を解明する。これを電動義手などの母指構造へ応用すれば、より安定した把持が可能となる。H26年度の目的は、形状、大きさの異なる物体を把持した際において、静的な指軸と横断軸方向の母指爪ひずみ(遠位中央、近位橈側、近位尺側)を計測することであった。H27年度の目的は、円柱物体を把持した状態で、それでスポンジを叩打した際において、動的な母指爪ひずみの計測を行うことである。さらに、CTで撮影した母指および爪の画像から、三次元母指モデルを作成して、平板圧迫時の母指指腹部変形と爪ひずみを計算することである。 「研究実績」(H26年度)静的に把持した際における母指爪ひずみを計測した結果、以下の結果を得た。物体サイズが小さい場合、指軸および横断軸の両方のひずみ分布が非対称であったが、物体サイズが大きくなると、どちらかの軸のひずみ分布の非対称性が解消された。小さい物体を把持する場合、母指指腹部尺側面が主要な接触面であることが、橈尺方向に非対称なひずみ分布の要因であった。大きい物体を把持する場合、接触面は指腹部中央へ移動するが、母指内部構造の非対称性によりひずみ分布の非対称が生じたと推測された。 (H27年度)動的にそれでスポンジを叩打した際における母指爪ひずみを計測した結果、以下の結果を得た。円柱がスポンジに衝突した瞬間に、爪ひずみに大きな変化が生じた。円柱で叩打した際の最大ひずみを比較すると、尺側指軸方向の最大ひずみは圧縮ひずみであった。全ての直径において、指軸方向のひずみは橈・尺方向で非対称性が生じた。直径が大きくなるに伴い、橈側横断軸方向のひずみは有意に減少した。爪にCTで撮影可能な薬剤を塗布して、爪の三次元モデルを作成することができた。これによる三次元指モデルを作成し、円柱把持における指腹部の変形と爪のひずみを計算した。
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