研究課題
本研究では、脳情報から指運動情報の予測を行うため、脳波(EEG)を用いた個々の指運動情報の予測および機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いた運動情報の予測に関する研究を実施した。まず、脳波を用いた指運動予測では、指運動の実行(実運動)と想起の両方を行う実験を行い、その識別性能を検討した。実験課題には、薬指を除く右手の4つの指を屈伸する運動課題を採用し、4つ指の判別(4クラス判別)ではなく、個々のペアに対する2クラス判別を行った。判別に用いる特徴量には主要な周波数の時系列を用いた。7名の被験者に対して得られたデータの判別を行った結果、運動実行では、いくつかの指のペアにおいて、被験者平均で約65%程度の判別率が得られた。一方、運動想起の場合には多くの場合判別率が低下したが、60%程度の判別率を得られる被験者も存在した。このことから、実運動および運動想起において個々の指運動情報を抽出できる可能性があることを示唆した。しかし、その判別性能は未だ十分でなく、特に運動想起においては個人差も大きいため、fNIRSを組み合わせた電流源推定やニューロフィードバックの検討が必要であると考えられる。また、fNIRSを用いた運動情報の抽出に関しては、ボール把持運動や腕のトラッキング課題などにおいて、通常より短いプローブ間距離を持つ短距離チャネルから頭皮血流アーチファクトを除去する手法を提案し、その有効性を示した。また、それを用いて把持運動する手の予測精度を向上させる可能性も示した。今後は、脳波と組み合わせた指運動情報の予測精度向上について、頭皮血流除去を組み合わせた検討を行う予定である。
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