研究課題/領域番号 |
26560309
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
石光 俊介 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (70300621)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 聴覚障がい / 触覚 / フィードバック / リハビリテーション / 騒音 / 声量 / 発声 |
研究実績の概要 |
システムを実現するために、入力側として音声情報を抽出する体内伝導音抽出位置とその認識方法の検討を行った。出力側としては有効な振動呈示箇所を振動検知閾で評価し、最も有効な呈示箇所を見いだした後に、入力信号を処理して出力側に渡す中間部分の検討に移った。ここでは、マイコンを用いるとともに周辺回路も設計し呈示装置を試作した。このように実験を進めると同時に、実用システムの試作も試みた。 ・フィードバック呈示する刺激の検討 振動パターンの呈示には偏心モータを用いて行い、声量は振動の強さで表現することにしたが、実際は回転数での表現となった。このモータ回転と振動の関係を明らかにすると共に、感覚のダイナミックレンジ把握のため振動弁別域の調査を行った。 ・フィードバック呈示装置の試作 上の実験で得られた刺激量を用いて、刺激時間長に関わる実験を行う予定であった。本研究で開発するシステムが母音認識結果から振動をフィードバックする仕組みとしているので、母音の発声時間である数十ミリ秒での刺激が検知でき、かつ連続的にこれらが識別できることを実験しなければならなかったためである。このためには今度はその振動パターンを連続的に出力する装置が必要で有るが、そのような市販装置は存在しないため、自作した。この回路設計に時間が掛かり、ここまでの実験はできずに試作に終わった。 ・体内伝導音抽出方法の検討 体内伝導音を用いることで対話相手の声や周囲雑音に影響されないというメリットがある.この方法は基盤研究(B)の発声機能障がい者支援システムで検討してきており、この知見を本課題にも生かすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィードバック呈示装置の試作において、基礎実験で得られた刺激量を用いて、刺激時間長に関わる実験を行う予定であった。このためには今度はその振動パターンを連続的に出力する装置が必要で有るが、そのような市販装置は存在しないため、自作した。この回路設計に時間が掛かり、呈示装置の性能チェックに手間取り十分な実験はできなかった。ただし、1年目の到達目標は提示装置の試作であったため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
自作システムである呈示装置を有効に用いて、実時間処理に基づく音声呈示時間での振動認知などを明らかにする。また、実用システム開発においては聴覚障がい者の方に日常使用して頂き、その声を元に改良を加え、さらに実験検討をしていく。また、評価実験用に聴覚障がい者音声及び体内伝導音を高ダイナミックレンジで多チャンネル収録し、データベースとしても構築するとともに公開するため引き続きデータベース構築を行う。 ・体内伝導母音認識システムの検討 上に述べたように体内伝導音認識の知見は活かすことができるが、母音認識を行うために認識スコアや時間長を利用した精度向上の検討が必要である。また、実際の障がい者の方の音声の特徴に適応処理する必要がある。これはシステムを使ううちにリハビリテーション的側面とシステム的側面の両方から徐々に適応変化していくものである。その追跡も含めて、評価していく必要がある。多様な障がい者の発声に対応できるものにしなければならず、この認識率が実用化の要となる。また、システムは実時間動作しなければならず、マイコンベースでは処理が間に合わない場合も考えられる。その際にはディジタル信号処理装置(DSP)もシステムに取り込み、実時間システム構築の検討が必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
呈示装置の自作の試行錯誤のため、それを用いた実験のための予算を翌年に回した。今年度は基礎実験にとどめたためである。また、実際の障がい者の方に呈示する実験に至らなかったため、その費用も翌年度に回すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
呈示装置の検証ができたため、その評価実験ならびに実際の障がい者の方にご協力をお願いし、実験を推進する予定である。このため差額分費用は今年度前半に使用させて頂くこととした。
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