対象は、誘発電位検査の電気刺激に抵抗を示す年少児が多かったため、歩行能力は自立レベルから杖及び歩行器等の介助が必要な10歳代から30歳代の7名である。歩行前後のプロトコルは、歩行開始前に5分以上の安静の後、ゲイトコレクターを装着し、対象の自覚的運動強度に基づき軽負荷及び重負荷歩行後、10分間の安静をとり終了とした。近赤外分光法(以下NIRS)及び筋電図(以下EMG)の電極は、両側の前脛骨筋及び外側腓腹筋に装着し、NIRSにより歩行前の安静時から歩行終了後10分間の局所筋の血中酸素動態(酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの濃度変化)を計測し、EMGにより歩行初期及び後期の筋電位を計測した。また、外側腓腹筋の緊張状態は、歩行前、重負荷歩行直後、歩行後10分経過後の3回、誘発電位検査装置を用い、内果後方の母趾外転筋に記録電極、母趾の付け根に基準電極を装着し、脛骨神経刺激にてM波およびF波を記録した。M波の最大刺激、刺激頻度0.5 Hz にて16回計測し、平均 F/M 比をF波のパラメータとした。筋緊張の程度変化をみると、7名中4名は歩行前に比べて歩行後の平均F/M比が、変化なしあるいは低値を示したが、足関節の他動的背屈運動に抵抗を示す3名は高値を示した。また、血中酸素動態は、すべての対象において歩行後、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの濃度の格差が大きくなっており、局所筋の疲労が推測され、その疲労程度は10分間の安静後も改善を認めなかった。さらに、歩行初期に比べて歩行後半のEMG波形は、全対象者で歩容の改善(1歩行周期が短縮、振幅が増加、低域周波数に移行、筋活動が明瞭化)を示した。結論として、ゲイトコレクターを適用しても歩行後に局所筋は疲労するが、足関節に筋緊張亢進を示しつつも関節可動性が得られる対象者の場合、歩行効率性が改善し、神経学的にも筋緊張は低下する傾向を示した。
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