本研究では,身体動作に関わる新たな情報と,その伝達手段として,錯覚による運動感覚情報の提示を提案する.錯覚による運動感覚(以下,運動錯覚)の提示は,四肢の関節運動に関わる筋肉の腱への振動提示をすると肘が伸展するように感じる.この錯覚を利用して,実際の動きを伴わずに,目標とする運動をしている感覚を生起させることが可能な運動錯覚の提示装置が開発されれば,先に挙げたような教育現場における運動学習支援のみではなく,運動機能障害者へのリハビリテーションへの効果も期待できる.申請者らは,四肢の自由な運動感覚を錯覚として提示できる装置を開発し,特に教育や福祉,医療現場における用途開拓を目指し,その分野における可能性の検討を行うことを目的としている.初年度,2年目と当初の予定の通り行うことができた.具体的には,任意の周波数の振動刺激を提示できる装置を開発した.また,開発した振動刺激提示装置を用いて,出力周波数,最大発揮力を計測し,装置の基本的な特性も調べることができた.なお,最終年度は,本研究で開発した振動刺激提示装置を用いて,振動刺激による人差し指屈曲錯覚の生起と錯覚特性を明らかにすることができた.本研究により,肩や指への振動錯覚の適用の可能性を示すことができたことで,リハビリテーション分野における振動錯覚の活用に向けて,一歩近づくことができたといえる.
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