研究課題/領域番号 |
26560316
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研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
五十嵐 朗 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (10570632)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 睡眠時無呼吸 / 非接触計測 / Kinectセンサ |
研究実績の概要 |
Kinect for Windows(Kinectセンサ)を用いた非接触計測による睡眠時無呼吸症候群の簡易スクリーニングシステムの開発を目指して、以下の実験を行った。 18個の2軸ジャイロセンサ・モジュールをマトリックス状に配置した多点変位計測システムを構築し、藍野大学研究倫理委員会の承認を経て、インフォームド・コンセントの得られた健常成人男性3名を対象として、Kinectセンサの深度センサの計測値との比較を行い、呼吸運動に伴う胸郭の変位を立体的に測定した。その結果、胸式呼吸時は鎖骨下近傍の角度変化が大きく、腹式呼吸時には腹部での角度変化が大きくなる傾向が認められ、胸郭の動きを立体的に確認できた。また、ジャイロセンサ出力には血液駆出に伴う動きが呼吸波形に重畳していることが確認され、呼吸波形と心拍動の同時計測も可能であることが示唆された。なお、体表面の血流計測技術の開発を前倒ししたため、深度センサからの3D骨格座標計測の改良とマルチアレイマイクロフォンによるいびき音の解析については、基礎的な動作検証のみを行った。 前述のKinectセンサを用いた体表面変位計測法の検討過程でRGBカメラ画像が体表面の血流状態を反映する知見が得られたので、RGBカメラ画像から脈波成分を抽出する方法を前倒しで検討した。健常成人男性5名を対象として、被験者の右頬を測定部位として計測を行った。また、比較検討するために、指尖部に光電容積脈波計を装着して同時計測を行った.その結果、両者の波形のFFT解析結果はほぼ一致し、Kinectセンサで抽出した波形は脈波であることが示唆された.さらには、サーミスタ呼吸波形との比較によりKinectセンサで抽出した波形には呼吸成分が含まれていることを確認した。 以上より、Kinectセンサを用いて呼吸様式の判別および脈波の非接触計測が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2軸ジャイロセンサ・モジュールを用いた胸部・腹部の多点変位計測システムを開発し、呼吸運動を立体的に把握することが可能となった。前述のシステムとKinectセンサの深度センサとの同時計測を行い、胸式呼吸と腹式呼吸での体表面変位の違いを三次元的に確認できた。 また、KinectセンサのRGBカメラ画像を用いた体表面血流状態変化の計測法の検討を前倒しで行い、輝度差分の時系列データが体表面の血流状態変化を反映しており、呼吸成分が重畳した脈波の非接触計測が可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、今年度は基礎的な動作検証に留まったKinectセンサの深度センサからの3D骨格座標計測の改良とマルチアレイマイクロフォンによるいびき音の解析の検討を進め、それぞれの技術要素をシステムとして取りまとめを行い、リアルタイム連続計測可能なプロトタイプシステムの開発を行う。 また、KinectセンサのRGBカメラ画像を用いた顔面の血流状態変化の非接触計測については、脈波に比例する信号成分を抽出できたことから、顔面での至適計測部の検討を行い、関心領域(ROI)の決定を行う。また、KinectセンサのFace Tracking機能を利用して、寝返りなどの体動が起こった場合でもROIが追従して移動し、安定した計測が可能な技術の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンピュータ等の機器類の購入は今年度内にほぼ予算執行したが、今年度分の研究成果の発表を第54会日本生体医工学会大会(2015年5月)としたために、旅費等の費用分が次年度に繰り越しとなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、被験者数を増やし、構築したシステムの動作検証を行うために大量のデータを保存する必要がでてくるので、大容量ハードディスク(70,000円程度を予定)を購入する。また、システムとしてまとめ上げるために必要な電子回路部品(80,000円程度を予定)を購入する。それ以外の経費としては、研究成果発表のための学会参加旅費および論投稿用費用などに使用する予定である。
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