研究課題
最重度難聴者にも利用可能な新型補聴器(骨導超音波補聴器)の開発が進んでいる.一方,難聴のために自己発話の聴取(聴覚フィードバック)が困難になると,明瞭かつ流暢な発話の維持や獲得が困難になる.本課題では,最重度難聴者にもある程度の聴覚フィードバックを与えることができる骨導超音波補聴器を利用し,最重度難聴児のための発話/聴取訓練装置を開発した.また,開発した装置を用いて発話訓練や聴取能評価を実施し,発話運動と聴覚入力の相互メカニズムや発話/聴取訓練装置の改善についての知見の獲得を図った.1. 発話訓練装置の開発:タッチ操作が可能なタブレット情報端末と骨導超音波補聴器を用いて,難聴幼児のための発話/聴取訓練装置を開発した.取り回しの向上のために補聴器とタブレット間は無線接続とし,タブレット上に以下の発話/聴取訓練プログラムを実装した.a.表示された文字(日本語単音節および単語)に対応する(手本となる)音声を呈示する機能,b. 被訓練者自身の発話を録音して,正常発話と比較できる機能,c. 呈示される音声と同時に補助的視覚情報(被訓練者および正常発話者の発声時の口元の動画)を表示する機能,d. クイズ形式で聴取試験を行う機能.2. 新しい聴取能評価試験の開発:従来の聴力検査は専ら純音や語音の聴覚閾を調査対象としているが,豊かな音声コミュニケーションのためには,非言語・パラ言語情報が適切に伝達される必要がある.骨導超音波補聴器の内部信号処理方式を変化させ,音声に含まれる感情や性別や年齢といった話者情報の伝達度合いを検証し,重度難聴者の聴取/発話訓練の実施に最適な条件を調べた.3. 難聴幼児を対象とした発話/聴取訓練の実施:上記の成果を活用して,重度難聴幼児に対する発話/聴取訓練を実施した.一部の被験者では短期的な発話/聴取能成績の向上が確認されている.今後,被験者数の増加と長期的な訓練効果の観察を図る予定である.
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