研究実績の概要 |
この研究に先立ち,私たちは視覚パタンのランダムさの知覚に順応が生じることを発見した (パタンランダムネス残効; Yamada, Kawabe, & Miyazaki. 2013, Sci Rep).パタンランダムネス残効が方位選択性,および輝度極性非選択性を有することから,視覚パタンのランダムさの処理に外側後頭複合体 (LOC) が関与していることが予見された.本研究は,その独自の心理物理学的発見に基づく仮説を検証することを目的とし,機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) による脳機能測定を行った. fMRI測定中,被験者は,2次元ドットパタンのランダムネス判断,および統制課題としてコントラスト判断を行った.その結果,本研究の仮説どおりにランダムネス判断に関連する脳活動がLOCに認められた (山田ら, & 宮崎. 2014, 日本神経科学大会).加えて,データを充足した結果,運動前野 (PMC) および一次体性感覚野 (S1) などにもランダムネス判断に関連する脳活動が認められた (Kadota et al., & Miyazaki. 2014, Soc Neurosci).このうち,S1は,文字通り,そもそも体性感覚を担う領野であり,手触り感の処理のための神経過程が視覚的乱雑さの処理に寄与している可能性が示された. さらにPPI (Psycho-Physiologic Interaction) 解析を行った結果,上記のランダムネス判断に関連する各脳部位 (LOC, PMC, S1) および両側の視覚野のあいだに機能的結合が認められ,視覚パタンのランダムさの判断に視-触覚のマルチモダルネットワークが関与していることが示唆された. また心理物理学的測定では,ランダム状のパタンからもたらされる嫌悪感に関する成果などを報告し,本研究計画で目標の一つにあげていた,仮説にとらわれない探索的アプローチによる新現象の発見も得られた.
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