研究実績の概要 |
発達障害は、近年その数が急増し社会問題化している。発症原因の多くは胎児期にあることが疫学研究、動物実験により指摘されている。本研究では、胎児期の行動観察による定量的指標を作成し、生後発達との関連さらには発達障害に繋がる行動特性を明らかにすることを目的としている。 平成27年度には、研究同意を文書で得た症例約40例、前年度と合計すると約90例について、胎児眼球・口唇運動の観察・解析、母体の姿勢変化に伴う胎児姿勢変化の観察、音刺激に対する反応、馴化・脱馴化反応を観察するための音刺激システムの開発を行った。胎児期データを採取した症例の出生後の睡眠覚醒状況等、発達に関する情報収集を質問票にて行っている。 胎児眼球運動(EM)に関して、REM期の活動性の指標であるEM密度、EM burst密度を週数毎に測定した。EM密度は、眼球運動期1分あたりのEM数である。EM burstは個々の眼球運動から次の眼球運動までが1秒未満で2回以上連続して出現した場合と定義した。その結果、EM密度は、妊娠24-26週; 5.6±1.4(mean±SD), 妊娠27-29週; 8.2±2.4, 妊娠30-32週; 9.9±2.2, 妊娠33-35週; 9.8±3.8, 妊娠36-38週; 10.6±3.7と増加傾向を認め、EM Burst密度においても、妊娠24-26週; 1.06±0.38, 妊娠27-29週; 1.87±0.64, 妊娠30-32週; 2.22±0.52, 妊娠33-35週; 2.24±0.90, 妊娠36-38週; 2.35±0.91と増加傾向を認めた。いずれも妊娠24-26週、妊娠27-29週で、有意に増加していた。発達各段階のREM期の活動性が神経系の予後と関係しており、REM活動性の変曲点、各週数の最適なREM活動を知ることは極めて重要と考える。今後、予後評価を行っていく。
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