研究実績の概要 |
本研究では『予測-遂行-評価』の機能連携に影響を与える変数として刺激入力-知覚段階を捉え,健常者と抑うつ状態にある被験者を1. ERG,2. TMS-EEG,3. ERPを指標とした差異検討を掲げている. 本年度も昨年度同様,191名を対象としたうつ性自己評価式尺度(self-rating depression scale; SDS)によるスクリーニングをおこなった.その結果を受け,本年度のスクリーニング対象者,かつ実験参加の希望があった者から19名を対象にPattern reversal ERG検討を実施した.実験条件は,コントラスト条件をMichelsonコントラスト比に基づいた8条件(98.44%, 83.59%, 60.94%, 37.50%, 19.53%, 8.59%, 3.13%, 1.56%)とし,刺激呈示条件を左眼呈示・右眼呈示条件とした.また,Pattern reversalは11.5rpsとした.ERG指標は,コントラスト比条件ごとのFFT処理によって得られた刺激に同期した周波数成分である11-12Hz,23HzのRMS値(μV)を線形回帰処理した傾き(以下,ERG-slope)とした(Bubl et al. 2010).心理指標には,実験開始直前に実施したSDSを用いた.尚,SDS回答に不備のあった1名を解析から除外し,18名を対象に検討をおこなった.その結果,右眼条件におけるERG-slopeとSDSにおいて有意な相関関係が認められた(r=-0.54, p<.05).本結果は抑うつ状態が知覚入力段階において影響を与えることを示唆している.
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