研究課題/領域番号 |
26560333
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
坂下 玲子 熊本大学, 教育学部, 教授 (20178552)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 運動遊び / 幼児 / 樹上遊び / 雲梯 / 鉄棒 |
研究実績の概要 |
遊びの三間の減少により、子どもが体を動かして遊ぶ機会は減少の一途をたどり、動作発達や運動能力の低下、気力の低下などが問題となっている。これらの現状に対し、運動・スポーツ推進体制の整備や適正実施のための基本指針等の提言や、身体活動ガイドライン等が公刊されているが、基礎的動きを習得させる方法や、効果的な指導法の提案には至っていない。また、幼児の運動遊びについて身体活動量や運動強度の面からからだづくりを目的とした研究が行われてきたが、新しい動き方を生み出す能力、つまり運動発生の視点からの研究は見当たらない。 そこで本研究は、安田(2013)の提唱する「樹上遊び」に着目し、高さのある遊具(雲梯、鉄棒、総合遊具等)における幼児の動きの発生とその発達過程を検討する。 実際の保育の現場では、安全のためという理由で高所での遊びが制限されたり、大型遊具は撤去される傾向が見られる。よって1年目にあたる本年度は、「樹上遊び」を取り入れている保育園を対象に、「樹上遊び」を行う上での安全管理についての考え方や実際の対応、また子どもの危険予測・回避能力について、「樹上遊び」の参与観察ならびに保育園の責任者に対するインタビュー調査により検討を行い、以下のような知見を得た。 (1)リスクとハザードをマネジメントする:園庭に人工芝を敷いたり、人を押すなどやってはいけないことの徹底などのハザードの除去と、遊びに内在し挑戦の対象となるリスクを残し子どもに経験・共有させることにより自分自身で考え判断する力を育てる。また、リスクとハザードを見極める保育士の感覚・感性が必要である。 (2)危険予測・回避能力の育成:事故を防ぐ環境、ある程度危険のある環境に加え、自由に遊べる環境を保障する。また運動遊びのなかで「息を合わせる(社会性を育む)」ことを大切にし、自分で考えて行動する子どもを育成することが危険回避能力の発達につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹上遊びを行う上での安全管理の問題、また子どもの危険予測・回避能力について観察およびインタビュー調査により検討し、園のリスクとハザードのマネジメントの上に、運動遊びを中心に、自分で考えて行動する子どもを育成していくことが、子どもの集中力・思考力・判断力を鍛え、危険予測・回避能力を育てることに繋がっているという知見が得られたことは、次年度の研究を見越しながら成果をあげていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、樹上遊びにおける動きの発生と発達過程の検討を目的としており、次年度は高さのある遊具(雲梯、鉄棒、総合遊具等)における運動遊びの観察とエピソード記述を併用して動きの発生や発達過程に関する資料を収集し、分析・検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、運動遊びの観察よりもインタビュー調査による検討を中心に行ったため、予定していたデジタルビデオカメラの購入を見送った。また、インタビュー調査の分析に時間がかかったため保育園へ出かける回数が少なくなり、旅費の使用も予定より減ったことが理由としてあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、運動遊びの観察とエピソード記述による分析を計画しており、デジタルビデオカメラの購入、観察のための旅費、テープおこしのための謝金および学会での成果発表のための旅費に使用する。
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