本研究の目的は、安田(2013)の提唱する「樹上遊び」に着目し、高さのある遊具(雲梯、鉄棒、総合遊具等)における幼児の動きの発生とその発達過程を明らかにするものである。 昨年度は、チェックリストを用いて鉄棒遊びと雲梯遊びの年齢による動きの習得状況を把握することができた。最終年度である本年度は、平成29年度に改訂された幼保連携型認定こども園教育・保育要領等に示された資質・能力の三つの柱並びに問題解決、コミュニケーション、意欲などの非認知的能力と呼ばれる汎用的なスキル等の重要性を踏まえ、「樹上遊び」の様子を撮影したVTRから場面を抽出し、非認知的能力育成の可能性を検討した。その結果、①「樹上遊び」の遊具は多くの人数で同時に遊べる遊具であることから、安全の判断や子供同士の配慮が必要となり、コミュニケーションやルールを守って遊ぶことに繋がっている。②鉄棒遊びにおいては子供自身が準備と片づけを行っており、その中で手助けをするなどの姿が見られ、協調性や友達への気遣いが見られる。③異年齢で遊ぶ中で子供たちは多くの関わりを持ち、また年上の子供の動きを日常的に見ることにより運動イメージを捉え挑戦する様子が見られる。④「樹上遊び」を通して他者を気遣ったり、互いに競い合ったり、教え合うことで自分を認めると同時に他者を認めている様子が観察されるなど、非認知的能力育成の可能性が示唆された。 研究期間を通じ、「樹上遊び」を通して幼児の動きの習得やコミュニケーション等の社会スキルの育成への有効性が示唆されたことを受け、「樹上遊び」の研究対象を知的特別支援学校小学部の低・中学年の児童に広げ、運動発達過程を検討していくことを今後の課題としたい。
|