平成28年度は,自発的な運動を促すような環境下での運動が骨格筋と情動に及ぼす影響について検証した.本研究では,Wistar系雄性ラットを対象とした.自由にアクセスできるホイールや地面と高所の行き来が可能なステップなどをセットした環境(EE群)と床敷きのみの環境(SE群)を用意し,6週間飼育を行った.飼育6週間後に,不安感情様を評価する明暗BOXテストを実施した.また,前頸骨筋の摘出,及び,血液採取後に血漿成分の分離を行った.前頸骨筋は,筋湿重量を計測して体重あたりの筋重量を評価した.また,分離した血漿成分よりノルアドレナリンとコルチゾール濃度を定量した.その結果,EE群においてSE群と比較して不安感情様は有意な低下した.さらに,前頸骨筋の筋湿重量は,EE群において有意な増加を示した.一方で,コルチゾール濃度は両群間に差異が見られなかったが,ノルアドレナリン濃度はEE群では有意に増加した. したがって,自発的な運動を促す環境は,骨格筋の筋量増加のみならず,情動の安定にも効果的である可能性が示唆された.
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