研究課題/領域番号 |
26560338
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研究機関 | 神戸常盤大学短期大学部 |
研究代表者 |
柳 敏晴 神戸常盤大学短期大学部, その他部局等, 教授 (30239800)
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研究分担者 |
畑 吉節未 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (10530305)
西田 順一 群馬大学, 教育学部, 准教授 (20389373)
小峯 力 中央大学, 理工学部, 教授 (60382826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 防災・減災教育 / 野外教育 / いのちの教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、評価尺度作成、教育プログラム開発とモデル構築を二本柱とした。防災・減災教育は、「いのちを守る」重さと難しさを人々の心の中に育む重要な教育であることが明らかになった。いのちを守る三原則は、想定にとらわれるな!その状況において最善を尽くせ!率先避難者たれ!と片田(2012)が述べていることに尽きる。避難三原則は、津波や地震の知識の教育でなく、自然に向き合うための『姿勢』を教える教育である。自然を愛し、自然に対する畏怖の念を持ちつつも、災害時に自分の命を自ら守り、自分ができる最善を尽くし生き延びる、この様な『姿勢』を育むことである。 神戸常盤大学は、阪神淡路大震災発生時長田区大火災発生時に緊急避難場所として、体育館を避難所都市避難者600名を受け入れた。このような歴史を持つ神戸常盤大学は、災害支援、意識啓発を中心とする活動(東日本大震災被災地への派遣等、復興の集いと「未来に向けての防災宣言」等)を継続実施している。 平成27年度の研究実績は、国内外の野外教育、防災・減災教育の先行事例収集と分析を継続実施した(6月全米ウエルネス学会出席、8月スプリングフィールド大学資料収集、3月Watersafety NZ等資料収集)。教育全体が防災を取り入れるためには、総合的な手法が必要である。「兵庫行動枠組みにおける教育」(UNISDR)は、1:制度上の基盤創設、2:災害リスクの特定、評価と経過観察、3:安全文化構築、4:教育部門のリスク減少、5:緊急時の教育部門の効果的対応を優先事項としている。 防災・減災教育を通した「いのちの教育」は、人々や組織が互いに学び合う相互的プロセスでもある。地域防災活動関係者と共に、地域に「いのちの教育」を中心とした災害文化を定着させる社会システムの構築が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、評価尺度の作成、教育プログラムの開発とモデル構築を二本柱としている。平成27年度は、評価尺度の作成について、予備調査を実施するに留まった。対象者を高校生に絞り次年度のまとめに繋げていく。 学際的なテーマである防災は、環境、開発、人間の安全保障など他の領域と結びついている。環境と災害の関連性は、自然問題と社会問題が混在している地域において明白で、地方部では特に顕著である(Shaw,2006)。教育プログラムは、震災学習ツーリズム(宮城県立I商業高校、宮城県立I高校:修学旅行で神戸市長田区を訪れた高校生に、「いのち」「復興」「防災」等をテーマに震災学習)を実施した。また大学生は、このプログラムの補助を行い、経験に基づく行動中心の学習を積み上げた。世界で初めて高校レベルに「環境防災科」を2002年に設置した兵庫県立舞子高校のカリキュラムは、高校生に対する良いプログラム例である。しかし、一般の高校においては、「震災学習ツーリズム」例のように、まず被災地を訪問、体験し、考える過程が重要であろう。 神戸市では、阪神・淡路大震災直後の「神戸の教育再生緊急提言会議」が、「震災を負の遺産として子供に残すのではなく、これを乗り越えて、未来に力強く生きていく子供の育成に寄与するように努めていかなければならない」と緊急提言した。その後「震災によってもたらされた教訓や可能性を学校の中に取り入れていこうと、未来へ伝えることが神戸の教育の使命と確認された。そこで、防災教育副読本「しあわせはこぼう」小学生用、「幸せ運ぼう」中学生用が発刊され、地域の学校の温度差を埋めるために活用された。「災害は怖い」という認識ではなく、児童の発達段階に応じて、科学的な知識を正しく理解し、災害への学びを学ぶようにしている。全国の小中学生への、災害教育の教本である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、評価尺度の作成を試み、尺度の信頼性・妥当性の検討を行う。一方、「いのちの教育」教育プログラムの理論構築とモデル構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、JR西日本あんしん社会財団研究助成を受けることができ、この研究助成金を主に使用したためです。
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次年度使用額の使用計画 |
研究打合せ会を3回開催し、研究のまとめを進める。最新の研究成果を収集するため、海外への資料収集を3回行う。
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