本研究は、モーションキャプチャシステムで取得した動作データを基に、ヒューマノイドロボットで動作を再現させてセルフコーチングを行う、新しいトレーニング支援方法を提案するものである。平成28年度は、ヒューマノイドロボットによる動作再現精度の更なる向上を検討し、セルフコーチングによるスキル改善効果を評価して、その成果をまとめ発表した。以下にその研究概要を説明する。 本研究で用いる小型ヒューマノイドロボットは、関節数やリンク長さなどの構造が人間とは異なるため、それらの差異が動作再現精度に大きく影響を及ぼす。そこで、人と小型ヒューマノイドロボットの関節の自由度の差異を補償する動作再現を目的として、写像に基づく方法を提案した。提案手法の有効性を検証する実験では、肩の関節自由度の差異が問題となる深呼吸動作を対象として、提案手法に基づく動作再現と順運動学を単に適用した場合の動作再現について、手先位置の再現性を評価した。その結果、順運動学では肩関節の自由度の差異により再現できない動作があるのに対し、提案手法では肩の自由度の差異を補償し、印象に合う動作再現が可能となることが明らかとなった。 次に、バレーボールのアンダーハンドパスを対象に、セルフコーチングによるスキル改善評価実験を行った。スキル改善に対する評価の観点を、ボールヒットタイミングに対する肩関節トルク、膝関節トルク、足関節トルクの立ち上がり時間とした。模範とすべき熟練選手では、各関節トルクがボールヒットタイミングとほぼ同時に立ち上がるのに対し、初心者では様々なタイミングでそれぞれの関節トルクが立ち上がる。セルフコーチングを取り入れてトレーニングを行った場合、関節トルクの立ち上がりが熟練選手と同様にボールヒットタイミングとほぼ同時に立ち上がるようスキルが改善される傾向にあり、本提案手法の基本的な有効性を確認した。
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