研究課題/領域番号 |
26560341
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
浅井 武 筑波大学, 体育系, 教授 (00167868)
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研究分担者 |
小池 関也 筑波大学, 体育系, 准教授 (50272670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CFD / 風洞 / 流体 / 空力 / ボール / サッカー / 抵抗 / ボルツマン |
研究実績の概要 |
本研究は,従来の風洞実験や数値流体解析では計測困難であった,非定常状態における境界層や渦構造の動態や力の分離を,メッシュレスの格子ボルツマン法を用いることによって高精度に予測し,スポーツ技術や用具(含む低抵抗ウェア)のパフォーマンスを飛躍的に向上させようとするものである.計画初年度の本年は,先ず,計算クラスターサーバーを立ち上げ,計算ソルバー等をチューニングし,テスト計算を実施した.その後,レーザースキャナによって,対象物計測の実験を行い,妥当な制度の形状が得られたので,サッカーボールを対象に,ブラフボディに関する空力計算を実施した.サッカーボールに関する解析では,FIFAブラジルワールドカップ2014の公式試合球,ブラズーカと,FIFA南アフリカワールドカップ2010の公式試合球,ジャブラニの空力特性を,本研究で開発中の数値流体解析システムを用いて比較検討した.その結果,FIFAブラジルワールドカップ2014の公式試合球,ブラズーカの空気抵抗は,中速領域(15 < U < 22 m/s)において,前回のジャブラニ(Wcup 2010公式球)より空気抵抗が小さくスピードが出やすいと考えられた. ボール飛翔シミュレーションにおいて,初速20m/s(迎角度10度)で,20m前方のゴールにシュートされたとすると,逆に,ブラズーカ(1.168秒)は,ジャブラニ(1.261秒)より,約0.09秒速く,約10%以上大きいボール速度で到着すると推定された.ブラズーカの空気抵抗特性は,中速領域を多用するパスのスピードを上げやすいことを示しており,高速パスサッカーに比較的適したサッカーボールであると推測された.無回転におけるブラズーカの揚力は,ジャブラニと比較して小さく,無回転ブレ玉のような変化球を考えた場合,ブラズーカはジャブラニより,不規則な変化が小さいと予想された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算システムのセットアップが完了し,計算が流れるようになったのは大きな成果である.また,レーザースキャナシステムによってブラフボディ形状を計測する技術の見通しも確立できてきている.テスト計算での乱流モデルは,マイクロスケールでは平均渦度,ラージスケールでは渦を直接計算する,LESモデルを用いているが,ある程度の精度で空力特性を計算できていることが確認されている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,レーザースキャナシステムによって,人体形状を計測し,解析システムの構築を推進する.また,スポーツ競技場面における人体姿勢や形状を,スキャナーでモデル化し,空力特性の分析と,流れ場の可視化を試みる.さらに,境界層の計算格子の高密度化技術を検討し,より,高精度の乱流モデルの開発を行っていく.また,解析対象をスポーツ競技場面における選手とし,スポーツ競技時における,人体周りの,流体プロファイル計測技術の研究・開発を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ミクロレベルの計算,特に,境界層の記述に不整合が生じて,そのレベルの計算が先送りになっているため,それにかかるデータ分析用の補助謝金ならびに海外の学会への出張日程が合わず見送ったため未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
データ分析や実験補助謝金として執行するとともに,海外での情報収集のため旅費の一部にも充てる予定である.
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