研究課題/領域番号 |
26560347
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
鈴木 壮 岐阜大学, 教育学部, 教授 (00115411)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アスリート / 身体とこころ / 身体症状 / 心理力動論 |
研究実績の概要 |
アスリートの相談事例及び伝記や雑誌記事に示されている、彼らの競技ヒストリーの中での身体症状(病気やケガ)や動きの変化の意味を事例研究法によって、カナー(1974/1972)の症状論やユングの無意識論を援用して心理力動的観点から検討した。カナーは症状には5つ意味があるとし、「入場券」、「信号」(シグナル)、「安全弁」、「問題解決の手段」、「厄介物」を挙げている。また、ユング心理学では身体症状に無意識的な意味が包含されていることが知られている(山中、1993)。その中で「安全弁」「問題解決の手段」、そしてユングの「コンステレーション」からアスリートの身体症状や動きの変化の意味を検討したのである。 その結果、勝利を追求するアスリートは厳しいトレーニングを課すことになるので、心身の限界ギリギリのところまで自分自身を追い込むことになり、それによってケガや病気、動きの悪さが生じるときがあり、それは心も体もそれ以上壊れないように心身を調整する「安全弁」の働きという意味があることが示された。また、ケガや病気あるいは動きの悪さはそのときの「限界」や「壁」を示しており、それによってこれ以上向上は望めないという限界を感じさせることで競技からの離脱につながる場合と、「乗り越えるべき課題」となり、それを乗り越えることによって競技力向上や人間的成長につながる場合があった。つまり、その時の心理状態と身体症状や動きが心理的に布置(コンステレーション)されていることが示された。アスリートの身体症状や動きの変化は身体だけでなく、心の動きとも共時的に存在しているのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事例的検討によってアスリートの身体症状に意味は明らかになったが、より明確にするためにさらに質的な検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
アスリートの相談事例、伝記や雑誌記事、描画について資料を引き続き収集すると共に、修正グラウンデットセオリーに基づいて質的検討を行う。また、3年間の研究をまとめ、国内外で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集した資料の集計に手間取り、まとめるまでには至らなかった。そのため、まとめるに当たって協力を得るための予算が残額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
収集した資料を質的分析するための協力を得るために支出する。
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