アスリートの相談事例などから彼らの身体症状・反応の深層心理学的な意味について、修正グラウンデッドセオリーに基づいて質的に検討した。その結果、《こころとからだの悲鳴》をコアカテゴリーとして、その他に<強迫性><他者懸念><パフォーマンスの変動>という合計4つのカテゴリー、「過負荷による身体症状」「心身のアンバランス」など13の概念があることが示された。そしてそのときに、アスリートは身体症状・反応による苦悩を乗り越え、洞察、そして成長に至る場合と、競技離脱に至る場合とがあることが示された。真面目に、強迫的に競技に取り組むアスリートは心身ともに限界に挑戦しながら競技生活を送ることになり、それは常に身体症状・反応として問題が表出し、競技休止や離脱の危険性を伴う。そのような彼らのからだが示す反応は単なる肉体の事象ではなく、こころとからだの総体としての人間の事象であること示唆された。 このようなアスリートの身体症状・反応の心理学的な意味を理解することは、心理サポートをより有効にすることにつながっていく。そのため、本研究課題につながるものとして、支援を求めてくるアスリートの身体的訴えの背景にある心理的課題を見立てることの重要さ、実践を通しての研究につながる事例研究の積み重ねの必要性などについて示唆した。
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