研究課題/領域番号 |
26560351
|
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
小田 俊明 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10435638)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 筋 / 腱 / 感度解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,実験では検討することが困難である運動時に生体内で生じる力学・生理学現象を精度良く解析する有限要素法を用いたシミュレーションシステムを構築・活用し,バイオメカニクス研究の発展に寄与することを最終的な目的としている.そのために,申請期間においては,従来から活用されてきたが使用環境に制約が大きかった汎用有限要素システムではなく,自由度の高い有限要素シミュレーターを生体組織解析用に開発し,それらをバイオメカニクス研究に応用するシステムを構築し,実際のスポーツバイオメカニクス研究へ活用する.我々はこれまでに,筋腱複合体の解剖学的・力学的・生理学的要素を再現した有限要素シミュレーターの第一世代を開発し,その研究への応用を報告した.本年度は,このモデルをスポーツバイオメカニクス研究に活用する最初の段階として,1)形状モデルの入出力や境界条件の設定,ポストプロセス等の機能を持たせた複数ソフトウェアの改良・開発・シームレスな連携により筋腱複合体の有限要素シミュレーターシステムを準備すること,2)簡易形状モデルにおける筋収縮を伴うシミュレーションを実施し,これまでの生理実験において報告された結果を再現することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,まず,計算環境を整備し,次に,筋腱複合体の各種形状がその機能に与える影響を調査するための有限要素解析プログラムで用いるための汎用メッシュモデルを効率良く作成する手法について検討,実際のテストシミュレーションに着手した.申請したシミュレーション用計算サーバーを購入し,必要なシステムの実装,関連ソフトウェアの導入を実施した.次に,人工形状と医療画像を用いた実形状との両モデルを複数の汎用有限要素ソフト,CADソフト,研究グループで自作したソフトとを組み合わせて作成し,形状が計算手続きに与える影響について評価した.具体的には,複数存在するメッシュのファイルフォーマットにより計算が困難となることがないよう複数ソフトウェアにおける計算過程を精査・調整した.加えて,実形状から作成するモデルのメッシュ品質の向上に関してスムージング等の手法を確立した.その結果,簡易形状モデルにおいて,等尺性収縮,短縮生収縮,ならびに伸張性収縮のシミュレーションが実施できた.そして,過度の変形によるメッシュの座屈による計算不能状態が生じる閾値について検討した.計算事例として,長さー力関係のシミュレーションを実施し,生理学的に問題のない結果を得ることができた.加えて,対象筋が複数となり,収縮が異なるタイミングで生じるケースにおけるシミュレーションを開始した.このように順調に研究計画を達成している.
|
今後の研究の推進方策 |
上記の様に今年度は簡易形状における筋収縮を伴うシミュレーションを行う段階まで研究を進めた.現在,力―長さ関係を再現する計算を終え,次にその値に組織のもつ力学的性質や生理的性質の与える影響について検討する.また,その後,力―速度関係に関して同様の計算を実施する.それらの中で,運動,トレーニング,リハビリテーション等において変化しうる値が筋パフォーマンスに与える影響の感度解析を実施し,それらの貢献度の多寡について検証を実施する.次に,実形状を用いた解析を行う.その際には,医療画像からの3次元形状のモデル化について更なる改良の可能性についても検討する.ここまでの単一筋を対象としたモデル化が軌道になった段階以降は,複数筋の挙動がそれぞれの筋パフォーマンスにどのように相互作用するのかの解析を行う.いずれのシミュレーションにおいても,実験による先行研究において報告された範囲の上限値と下限値の間の値を用いることによって,相互作用の強さ等,実験において検証することが事実上困難である問題について積極的に解析を行うこととする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展状況との対応において,今年度より来年度に計算機を新規購入したほうが効率的であると判断したため.
|
次年度使用額の使用計画 |
計算機購入
|