昨年度までに開発した生体電気インピーダンス測定装置から出力される5つの周波数におけるインピーダンスの実部成分Rおよび虚部成分Xの10種類の信号をノートパソコンにUSB接続できるA/D変換にて同時に計測し、その後最適化数値計算によって4つのインピーダンスパラメータ(Z0、Z∞、fm、β)を算出できる可搬性のある計測システムを開発した。引き続き球種の違いの判別について検討を行った。 生体電気インピーダンス測定に4電極法を採用しているが、内側2つの電位電極の装着位置もこれまでの研究で採用した橈骨手根屈筋の手関節側とした。判別すべき球種はストレート、スライダー、カーブ、シュートの4種類を対象とした。各球種におけるボールの握り方および投げ方については、手塚による方法(手塚一志著:切れ味バツグン!!変化球習得メソッド、高橋書店、2015年6月)を採用した。ボールの加速時に背屈が最大となる時刻から0.1、0.2、0.3、0.4、0.5 s後の5つのパラメータ(Z0、Z∞、fm、βと細胞内液抵抗を示すRi)の変化率(合計25個)を判別分析のパラメータとした。 各変化球30投球で、計120投球を増減法による判別分析を行った結果、判別的中率が99.17%となった。判別分析に寄与が大きい5つのパラメータは0.1 s後のZ0、Z∞、fm、Riおよび0.2 s後のfmであった。周波数特性の中心周波数fmが判別分析に大きく影響を与えた要因として回内と回外,橈屈と尺屈におけるfmに対する感度が高かったためと考えられる。 これまでの研究で故障しやすい投球の判別を行ってきたが、同様に球種の違いの判別が可能であることがわかった。本システムおよび解析方法は投球動作のトレーニングに応用が期待できる。
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