本年度(平成27年度)の研究目標は、前年度からの課題を継続して遂行しながら、「潜在学習による知覚運動スキル獲得のための新たな学習方略の検討」を行うことであった。本年度に実施した研究の成果及び研究機関全体を通じて実施した研究成果は以下の通りである。 「課題1:知覚運動スキルトレーニングシステムの開発と評価」主な競技タスクとして、サッカー等のゴールキーピング動作、剣道の対峙などを調査対象としながら、計測およびトレーニングシステムのための全身反応計測および大型スクリーン刺激呈示機器について、システムの候補となる設備の検証を行った。特に知覚運動スキルを評価するためには光学式モーションキャプチャシステムと、眼球運動計測装置を同期させる計測システムが必要であり、空間および時間分解能に優れた高価な計測環境と、より簡便で較正時間を短縮できる計測環境の両者のシステムの構築を行った。 「課題2:熟練競技者に共通する知覚運動スキル特性の検討」次に課題1にて得られた実験データを元に、各種競技の熟練競技者に見られる知覚運動スキルについて考察を行った。特に伝統的な日本武術に伝わる『遠山の目付』について検証を行い、単に高速な眼球運動を必要とするのではなく、環境に応じて広い視野を確保するために視線を安定的に保ちながら、身体運動との協調関係を促すための知覚運動連携を実現するための熟練メカニズムの一部が解明された。 「課題3:潜在学習による知覚運動スキル獲得のための新たな学習方略の検討」課題に先立ち行った先行調査結果をもとに、ダーツ投げ動作に着目し、主に競技現場にて用いられている「紙飛行機を投げるように」というアナロジー教示を採用したスキル獲得のための潜在学習について検討した。特に初心者群の投球動作技能の向上が短期間ながらも見られる結果を得ることができたが、より詳細な検証が今後の課題となった。
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