本研究は,サッカーにおける競技力向上を目的とし,サッカー試合映像の画像処理によって試合中の選手・ボール位置を計測するシステムの開発および計測に基づいた選手およびチーム機能の評価を目指すものである. 平成27年度(2015年度)は,2台の市販ビデオカメラでサッカーピッチを半面ずつ撮影した映像から試合中の選手位置を画像処理によって計測するシステムの高精度化を実施した.背景除去等の基本的な画像処理法と選手の移動を動態予測モデル(パーティクルフィルター)で予測しながら追跡する選手位置計測システムは前年度までに開発済みである.この方法の選手位置計測アルゴリズム内に,新たな画像処理(ミーンシフト)を加えることで,計測精度が大きく向上した.さらに,計測されたデータを可視化する方法として,カーネル密度推定による情報の可視化方法を検討した.これらの方法を用いてJリーグ選手データを計測と走行データの分析を行った.その結果,総走行距離が長い選手ほど11km/h以上の走行距離が長く,高強度の走行を行っていることが明らかとなった. 研究期間全体では,上述の選手位置計測システムのほかにボール位置計測システムを開発した.また,試合中のパスデータを計測し,グラフ理論を用いて選手間連携の評価を行った.その結果,選手間のパス回数と選手間を結ぶグラフにおける辺(エッジ)の出現回数との間に相関があることが示された.また,いくつかの試合データから同一のチームでは攻撃時に同じグラフパターンが頻出する傾向にあることが示された.このことから選手位置をもとに作成したグラフから選手間の連携やチーム機能が評価できる可能性が示すことができた.
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