研究課題
本研究の目的は、糖化ストレスによる骨格筋機能への影響を明らかにすることである。本年度は、終末糖化産物(advanced glycation end products: AGEs)を含んだ食餌を摂取させたマウスにおける、骨格筋生理学的特性の変化を検討した。5週齢の雄性ICRマウスを低AGEs食摂取群(n=10)と高AGEs食摂取群(n=10)の2群に分け、16週間飼育した。低AGEs食にはAIN-93G(オリエンタル酵母社)、高AGEs食にはAIN-93Gを160℃で1時間加熱したものを用いた。各餌および水は自由摂取とした。体重は1週間に1回、摂餌量は2週間に1回測定した。16週間の飼育後、麻酔下にてヒラメ筋および腓腹筋、長趾伸筋、足底筋を摘出して筋湿重量を測定するとともに、足底筋はin vitroにおいて筋張力測定を行った。結果、両群における体重および1日当たりの摂餌量に有意な差は認められなかった。体重あたりの筋湿重量は、長趾伸筋およびヒラメ筋、足底筋において、高AGEs食摂取群が低AGEs食摂取群よりも低値であった。また、足底筋の張力は高AGEs食摂取群が低AGEs食摂取群よりも低値であった。以上の結果から、AGEsを多量に長期摂取することにより、骨格筋の成長が阻害され、筋張力発揮に影響が及ぶことが明らかになった。最終年度は、AGEs摂取による骨格筋成長阻害の分子メカニズムの検討をin vitroおよびin vivo系において進めていく。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、研究実施計画通りin vivo系を用いてAGEs摂取による骨格筋への影響を検討することができた。解析内容に若干の変更があったが、実験結果は想定通りに得られており、概ね順調に進展していると判断する。
今後は、本年度に得られた結果がどのような分子メカニズムで惹起されるのかについて、in vivo系およびin vitro系を用いて検討を進めていく。具体的には、本年度に得られた筋サンプルのタンパク質発現および遺伝子発現の解析を行うとともに、骨格筋培養細胞を用いた解析を行う。
本年度は摂食実験において得られた筋サンプルにおいて、生化学的解析を行う予定であった。しかし、動物飼育施設の改修のため動物摂食実験のスケジュールを変更し、生理学的分析を本年度に実施して生化学的解析は次年度に回すことにしたため未使用額が生じた。
生化学的分析を次年度に行うため、未使用額はその経費に充てることとしたい。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 8件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Physiol Rep
巻: 3 ページ: e12592
10.14814/phy2.12592
巻: 3 ページ: e12601
10.14814/phy2.12601
Acta Physiol (Oxf)
巻: 215 ページ: 191-203
10.1111/apha.12600
http://www.hayashilab.org/
http://www.sozo.ac.jp/professor/goto_katsumasa/