糖化ストレスが骨格筋機能およびシグナル伝達ネットワークにおよぼす影響の包括的探索

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26560371
• 研究機関: 豊橋創造大学
• 研究代表者: 江川 達郎 豊橋創造大学, 健康科学研究科, 協力研究員 (00722331)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 糖化 / AGEs / 骨格筋 / 筋分化 / タンパク質合成 / タンパク質分解 / リン酸化 / 筋成長

研究実績の概要

本研究の目的は、糖化ストレスによる骨格筋機能への影響を明らかにすることである。本年度は、前年度に明らかになった終末糖化産物（advanced glycation end products: AGEs）の長期摂取による骨格筋成長阻害の分子メカニズムの解析を進めた。前年度と同様、5週齢の雄性ICRマウスを低AGEs摂取群（n=10）と高AGEs摂取群（n=10）の2群に分け、16週間飼育した。低AGEs食にはAIN-93G、高AGEs食にはAIN-93Gを160℃で1時間加熱したものを用いた。16週間の飼育後、ヒラメ筋と長趾伸筋を摘出し、筋分化マーカーであるmyogenic factor 5 (Myf5)、myogenic differentiation（MyoD）、myogeninの遺伝子発現、タンパク質合成のマーカーである70kDa ribosomal proteain s6 kinase（p70S6K）のリン酸化タンパク質発現、そしてタンパク質分解のマーカーであるmuscle RING finger 1（MuRF1）、atrogin-1 の遺伝子発現を測定した。結果、高AGEs食摂取群ではMyf5およびMyoD mRNA発現が低値であった。myogenin mRNA発現に差異はなかった。また、高AGEs食摂取群ではp70S6K Thr389リン酸化が低下していた。一方、MuRF1およびatrogin-1 mRNA発現に差異はなかった。以上の結果から、高AGEs食摂取により、筋形成シグナルやタンパク質合成シグナルの減弱を介して、骨格筋成長が阻害される可能性が明らかになった。研究期間全体の結果として、AGEsの多量および長期摂取により体内へのAGEs蓄積が進み、骨格筋のリン酸化タンパク質の発現や遺伝子発現に影響が及ぶことで、骨格筋の成長や収縮機能の低下を引き起こすものと考えられる。

研究成果

• [雑誌論文] Potential involvement of dietary advanced glycation end products in impairment of skeletal muscle growth and muscle contractile function in mice (2017)
  • 著者名/発表者名: Egawa T, Tsuda S, Goto A, Yokoyama S, Ohno Y, Goto K, Hayashi T
  • 雑誌名: Br J Nutr 巻: 117 ページ: 21-29
  • DOI: 10.1017/S0007114516004591
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Caffeine affects myotube size as well as regulates protein degradation and protein synthesis pathways in C2C12 skeletal muscle cells (2016)
  • 著者名/発表者名: Egawa T, Ohno Y, Goto A, Sugiura T, Ohira Y, Yoshioka T, Hayashi T, Goto K
  • 雑誌名: J Caffeine Res 巻: 6 ページ: 88-96
  • DOI: 10.1089/jcr.2015.0034
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Heat shock transcription factor 1-associated expression of slow myosin heavy chain in mouse soleus muscle in response to unloading with or without reloading (2016)
  • 著者名/発表者名: Yokoyama S, Ohno Y, Egawa T, Yasuhara K, Nakai A, Sugiura T, Ohira Y, Yoshioka T, Okita M, Origuchi T, Goto K
  • 雑誌名: Acta Physiol 巻: 217 ページ: 325-337
  • DOI: 10.1111/apha.12692
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] 終末糖化産物AGEs摂取はマウス骨格筋成長を抑制する (2017)
  • 著者名/発表者名: 江川達郎、津田諭志、後藤亜由美、横山真吾、大野善隆、後藤勝正、林達也
  • 学会等名: 第71回日本栄養・食糧学会大会
  • 発表場所: 沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市）
  • 年月日: 2017-05-19 – 2017-05-21
• [学会発表] Short-term heat stress stimulates glycogen and protein metabolism in rat skeletal muscle (2016)
  • 著者名/発表者名: Goto A, Egawa T, Sekine K, Sakon I, Oshima R, Tsuda S, Hayashi T
  • 学会等名: APS Intersociety Meeting: The Integrative Biology of Exercise VII
  • 発表場所: Phoenix, Arizona, USA
  • 年月日: 2016-11-02 – 2016-11-04
  • 国際学会
• [学会発表] 高AGEs含有食の長期摂取によるマウス骨格筋量および筋力発揮への影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 江川達郎、津田諭志、後藤亜由美、後藤勝正、林達也
  • 学会等名: 第55回日本栄養・食糧学会近畿支部大会
  • 発表場所: 帝塚山学院大学（大阪府大阪狭山市）
  • 年月日: 2016-10-22 – 2016-10-22
• [学会発表] 代謝センサーAMPKの骨格筋萎縮・肥大調節機構 (2016)
  • 著者名/発表者名: 江川達郎、林達也、後藤勝正
  • 学会等名: 第62回日本宇宙航空環境医学会大会日本宇宙生物科学会第30回大会合同大会
  • 発表場所: 愛知医科大学（愛知県長久手市）
  • 年月日: 2016-10-13 – 2016-10-15
  • 招待講演
• [学会発表] 短時間の熱刺激が骨格筋タンパク質ならびにグリコーゲン代謝に及ぼす影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 後藤亜由美、江川達郎、関根圭一、大島里詠子、左近一翔、津田諭志、林達也
  • 学会等名: 第71回日本体力医学会大会
  • 発表場所: 岩手県民情報交流センター（アイーナ）（岩手県盛岡市）
  • 年月日: 2016-09-23 – 2016-09-25
• [学会発表] 骨格筋量の調整における乳酸受容体の役割 (2016)
  • 著者名/発表者名: 大野善隆、横山真吾、江川達郎、杉浦崇夫、大平充宣、吉岡利忠、後藤勝正
  • 学会等名: 第71回日本体力医学会大会
  • 発表場所: 岩手県民情報交流センター（アイーナ）（岩手県盛岡市）
  • 年月日: 2016-09-23 – 2016-09-25
• [学会発表] MBLN1発現低下がマウス骨格筋細胞のミオシン重鎖mRNA発現に及ぼす影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 横山真吾、大野善隆、江川達郎、中村文音、後藤勝正
  • 学会等名: 第71回日本体力医学会大会
  • 発表場所: 岩手県民情報交流センター（アイーナ）（岩手県盛岡市）
  • 年月日: 2016-09-23 – 2016-09-25
• [学会発表] 高濃度アディポネクチンが骨格筋細胞の分化に及ぼす影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 伊藤理香、横山真吾、大野善隆、江川達郎、永富良一、宮田浩文、後藤勝正
  • 学会等名: 第71回日本体力医学会大会
  • 発表場所: 岩手県民情報交流センター（アイーナ）（岩手県盛岡市）
  • 年月日: 2016-09-23 – 2016-09-25
• [学会発表] 食事性AGEsがマウス骨格筋の成長に及ぼす影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 江川達郎、津田諭志、後藤亜由美、横山真吾、大野善隆、後藤勝正、林達也
  • 学会等名: 第71回日本体力医学会大会
  • 発表場所: 岩手県民情報交流センター（アイーナ）（岩手県盛岡市）
  • 年月日: 2016-09-23 – 2016-09-25
• [学会発表] 短時間の熱刺激が骨格筋糖代謝に与える影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 後藤亜由美、江川達郎、関根圭一、左近一翔、大島里詠子、津田諭志、林達也
  • 学会等名: 第51回日本理学療法学術大会
  • 発表場所: 札幌コンベンションセンター（北海道札幌市）
  • 年月日: 2016-05-27 – 2016-05-29
• [学会発表] 加齢性の骨格筋萎縮に伴う選択的スプライシング因子muscleblind-like1の変化 (2016)
  • 著者名/発表者名: 中村文音、大野善隆、横山真吾、江川達郎、鈴木美穂、鬼村知子、伊藤理香、後藤勝正
  • 学会等名: 第51回日本理学療法学術大会
  • 発表場所: 札幌コンベンションセンター（北海道札幌市）
  • 年月日: 2016-05-27 – 2016-05-29
• [学会発表] 短時間の熱刺激が骨格筋糖輸送活性ならびに5'-AMP-activated protein kinase（AMPK）に与える影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 後藤亜由美、江川達郎、左近一翔、関根圭一、大島里詠子、津田諭志、林達也
  • 学会等名: 第59回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 発表場所: 国立京都国際会館（京都府京都市）
  • 年月日: 2016-05-19 – 2016-05-21
• [学会発表] 終末糖化産物AGEs蓄積に伴う骨格筋リン酸化タンパク質動態の網羅的解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 江川達郎、大野善隆、横山真吾、後藤亜由美、津田諭志、林達也、後藤勝正
  • 学会等名: 第59回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 発表場所: 国立京都国際会館（京都府京都市）
  • 年月日: 2016-05-19 – 2016-05-21
• [図書] The Plasticity of Skeletal Muscle - From Molecular Mechanism to Clinical Applications (2017)
  • 著者名/発表者名: Egawa T
  • 総ページ数: 292 (251-275)
  • 出版者: Springer
• [図書] Phenolic Compounds (2017)
  • 著者名/発表者名: Egawa T, Tsuda S, Oshima R, Goto A, Ma X, Goto K, Hayashi T
  • 総ページ数: 240 (169-191)
  • 出版者: InTech
• [備考] 研究室ホームページ
  • URL: https://sites.google.com/site/tatsuroegawa/