1.短鎖脂肪酸による気管収縮/弛緩作用(コロンビア大学医学部麻酔科学講座との共同研究) FFAR3受容体はGi蛋白共役型受容体であり、短時間刺激時にはアデニル酸シクラーゼ活性の低下/cAMP産生減少により気管平滑筋を収縮させるのに対し、持続刺激時にはアデニル酸シクラーゼ活性のsensitization/cAMP産生増加により気管平滑筋を弛緩させる。そこで、FFAR3受容体作動薬であるプロピオン酸ナトリウムを投与した場合の気管収縮弛緩機構について検討した。プロピオン酸ナトリウムの短時間投与により、アセチルコリンによる気管収縮作用が増強した。しかし、プロピオン酸ナトリウムの長時間投与では、アセチルコリンによる気管収縮作用は減弱しなかった。これらの結果は、FFAR3は短時間刺激時には気管収縮を増強するが、長時間刺激時には気管収縮を減弱させないことが明らかになった。これらの結果は、腸内細菌由来の短鎖脂肪酸が気管トーンを調節しうることを示唆するものである。 2.短鎖脂肪酸投与時のヒト気管平滑筋細胞におけるcAMP活性の変化におけるFFAR3の関与の評価 短鎖脂肪酸(プロピオン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酪酸ナトリウム)投与時のヒト気管平滑筋細胞におけるcAMP活性の変化が、FFAR3を介した反応であるかを、siRNAでFFAR3をノックダウンしたヒト気管平滑筋細胞を用いて検討した。その結果、FFAR3をノックダウンしたヒト気管平滑筋細胞では、短鎖脂肪酸の短時間投与時に生じるcAMP産生減少作用が消失した。故に、ヒト気管平滑筋では短鎖脂肪酸がFFAR3を介してcAMP産生を減少させることが明らかになった。 今後は、短鎖脂肪酸産生腸内細菌の多寡、有無により気管収縮機構が受ける影響について、FFAR3-KOマウスを用いて評価を行う予定である。
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