前年度行ったエラスターゼ誘発マウス慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルを用いたラベンダー精油の作用の検討では,エラスターゼ投与後10日目において,ラベンダー精油処置COPD群は未処置COPD群と比較して肺胞洗浄液中の炎症細胞数の減少傾向を認め,肺病理組織画像解析にて有意な肺胞破壊の抑制を認めた。引き続き,エラスターゼ投与後4日目の肺組織の細胞接着分子mRNA発現を検討したがラベンダー精油処置COPD群は無処置COPD群と比較して発現抑制は認めなかった。しかしin vitroの実験において,血管内皮細胞における炎症性サイトカインTNF-α誘導性細胞接着分子の発現をラベンダー精油は有意に抑制した。次に,マウスCOPDモデルにおけるユーカリ精油の作用を,肺機能測定や肺胞洗浄液中の細胞分画,肺病理組織画像解析にて評価した。エラスターゼ投与後4日目では,ユーカリ精油処置COPD群は無処置COPD群と比較し,肺胞洗浄液中の炎症細胞数及び肺病理組織画像解析による肺胞破壊を有意に抑制した。エラスターゼ投与後の3週間後の肺胞破壊形成期は都合上18日目に観察し,ユーカリ精油処置COPD群は無処置COPD群と比較して,肺胞洗浄液中の炎症細胞数や肺胞破壊に有意差を認めなかった。肺機能測定値は,ラベンダー精油処置同様にユーカリ精油処置においても無処置COPD群と比較して,有意な変化を認めなかった。これまでの結果から,マウスCOPDモデルにおいてラベンダー精油は炎症細胞肺胞浸潤抑制傾向や肺胞破壊抑制作用を示し,ユーカリ精油は,エラスターゼ誘発炎症初期における炎症細胞肺胞浸潤抑制と肺胞破壊抑制を示すことが明らかとなった。
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