研究課題
本研究では、健常脳と高齢脳に対して、3次元動画像が脳機能や自律神経機能に及ぼす影響を、電磁気生理学的手法、脳機能画像および自律神経機能検査を用いて検討することを目的としている。本年度は、研究協力者①(池田拓郎:大学院生)と共に、まず以前より作成していた3種類の視聴覚的activityの異なる3次元動画像(①森林内を緩やかに移動する3次元動画像(川のせせらぎ音入り)、②激しい動きを呈するアクション3次元動画像(激しく物がぶつかり合う音入り)、③3次元ランダムドット運動視刺激(400個の白色ドット(視角0.5度)がランダムに動く、音なし))をモノクロ画像に変換したあと、輝度や音圧の微調整を行い、同画像間でほぼ同一の感覚刺激を与えられるように環境設定を行った。その後、その画像を用いて、健常成人(健常脳)を対象に、MEG、脳波および自律神経機能を記録し、感覚刺激の違い(視覚のみ、聴覚のみ、視覚と聴覚混合)による脳内情報処理過程の相違と自律神経機能との連関を、時系列で検討した。現在、記録したデータを時系列に分けて解析中であるが、脳磁図や脳波では、感覚刺激の違いによって、γ帯域、特に80Hzから100Hzの領域の微小電位(磁場)の頭皮上分布に差がでている。今後この分布に有意差があるのか、老年者ではどのような分布の変化が認められるか、を検討していく。一方同画像間での自律神経系の反応変化率は、安静時より大きいものから聴覚刺激のみ、視聴覚混合刺激、視覚刺激のみの順序であった。この結果は、ヒトの感覚が聴覚に比べて視覚優先であり、視覚刺激があると次に起こりうることがある程度予想できるために、それに対する身体変化の準備を整えることができるためではないか、と考えている。しかし、個人差も大きく今後記録例を増やして検討していく必要がある。
3: やや遅れている
本年度は高齢脳についても健常脳と同様の研究を行う予定であったが、刺激条件設定に時間を要したことと、健常脳測定や解析にばらつきが多く認められたことで、未だ健常脳での記録や解析に時間を要している。
平成27年度は、高齢脳についての測定を開始し、同時に、平成26年度に用いたモノクロ画像をカラー画像に戻して、脳磁図・脳波と自律神経機能の同時記録とデータ解析を以下手順で行う。記録や解析方法は平成26年度にほぼ確立しているため問題ないと思われるが、健常高齢者のリクルートや脳の状態を確認するためのMRIの記録などに時間を要する可能性がある。(記録・解析手順)1) 対象:研究Aと同じ被検者を用いる。2) 実験環境、記録、解析:脳磁図・脳波、および自律神経機能の記録と解析は、研究A-1に準じて行い、研究A-1の結果と比較する。3) 本研究の電磁気生理学的反応から研究A-1の結果を差分することで、聴覚刺激の有無と違いによる脳機能変化の相違を検討し、さらに視覚刺激と聴覚刺激の脳情報処理優位性も検討する。
健常者や高齢者に対する研究が次年度引き続きに行うことになったため、謝金の支払いの発生が次年度多くなるために、次年度使用額が発生した。
被検者謝金:健常者(10名)と高齢者(10名):1人1回 2000円x20人x5回=200,000円消耗品代:脳波電極など:約40,000円
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
J Fed Am Soc Exp Biol
巻: 28 ページ: 131~142