研究実績の概要 |
本研究では、3次元視聴覚刺激が健常脳や高齢脳に及ぼす影響を脳生理学的(電磁気生理学と機能画像)に検討し、高齢脳の賦活に有効な視聴覚的要素を抽出し、高齢脳の機能保持や再生を促進する3次元視聴覚刺激を開発・提案することであった。研究は、健常成人(健常脳)と健常老年者(70歳<, 高齢脳)での3次元視聴覚刺激の違いによる脳機能と自律神経機能の連関の相違を、全頭での脳磁図(MEG)と脳波の同時記録および自律神経機能変化(血圧、心拍数、心電図)に着目して、数理ソフトを用いて時系列で解析、検討することであった。実際には、健常成人と70歳以上の高齢者に3次元の視聴覚画像(映画)を1日2時間、隔日で2週間呈示し3次元刺激が脳賦活に及ぼす影響を、運動視認知閾値の変化で検討した結果、視聴前には全ての運動視刺激で健常成人に比べ高齢者で認知閾値の上昇を認めた。3D視聴覚刺激を行うと、健常成人では特に変化はなかったが、高齢者では視聴前に比べOFの認知閾値が改善した。よって、高齢脳でも外部刺激による賦活を続けることで、脳機能再生が図れる可能性が示唆された。 この結果をもとに、健常人で脳機能変化と自律神経機能変化を同時計測しながら、「森林散策」を題材とした3次元動画とそれに合わせた音楽を視聴させたところ、心拍数の低下と唾液アミラーぜの低下が認められ、副交感神経活動が亢進している状態で脳活動がリラックスしている可能性が示唆された。今後は高齢者にも同様の視聴を行い健常脳との相違を検討することで、癒しの脳内ニューロネットワークが明らかにできると考える。
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