生活習慣病や加齢は特定の筋線維タイプに変化が生じることで発症したり、筋機能の低下が生じたりすることが明らかにされており、この背景には各筋線維タイプのタンパク質発現や翻訳後修飾の違いが関係している可能性が考えられる。私たちは遅筋線維であるヒラメ筋において通常のα-アクチンよりも分子量が大きいα-アクチンを発見し、その発現量が主に速筋線維で構成される足底筋とは異なる可能性を見出していた。そこで平成26年度は新たに発見したα-アクチン(新規α-アクチン)の分子量の増加に影響を及ぼす可能性のあるユビキチン化とsmall ubiquitin-like modifier(SUMO)によるタンパク質の翻訳後修飾について検討した。その結果、骨格筋の新規α-アクチンがSUMO-1により修飾されている可能性があることを明らかにした。また、新規α-アクチンが核画分と可溶性画分に局在するが、収縮タンパク質画分には局在しない可能性のあることを示した。平成27年度と28年度には、ラットの尾部懸垂により後肢の過重負荷を軽減し、筋活動量を減少させ筋萎縮を生じさせる尾部懸垂モデルを用いて、ラットの後肢筋における新規α-アクチンの発現量に変化が生じるのか否かを検討した。まず、ラットの後肢骨格筋であるヒラメ筋と足底筋の筋重量が対照群と比較して尾部懸垂群において減少することを確認した。次に2次元電気泳動を用いて、ヒラメ筋と足底筋における新規α-アクチンの発現量の変化を検討した結果、両方の筋においてその発現量に大きな変化は認められなかった。これらの結果から、新規α-アクチンの含有量は遅筋に多く、SUMO化修飾されている可能性のあることが明らかとなった。さらに、少なくとも筋活動量の減少によって新規α-アクチンの含有量は変化しない可能性が考えられた。
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