研究実績の概要 |
ラット右下肢を10日間ギプス固定(CI: cast immobilization)する廃用性筋萎縮モデルを用いて、Type-1比率の高いSOL(soleus muscle)とType-2比率の高いEDL(extensor digitorum longus muscle)を対象とした。CI後6時間、1,4,10日における血流量および筋重量の変化と遺伝子発現の網羅的解析を試みた。CI後筋血流はSOLで早期(6h)、筋重量は10日で有意な低下が誘導された。 DNAマイクロアレイ解析を行い、血流量と重量変化に相関するそれぞれの遺伝子群を精査した。大きな発現変動(FC>10)を示す86Probeのうち、血流相関性が12probe、重量相関性が17probeであった。血流相関性遺伝子群のGOプロファイルの特徴は、Biological Processに関与するものが多く、重量相関性はCellular Componentが多く含まれた。血流相関性遺伝子群で特徴的なHspa1bやRcan1はいずれもType-1線維との関係性が最近の研究で報告されている。その上で、トリガーの1つが血流であることが新たに示唆された。一方、重量相関性遺伝子群は、Actc1, Ankrd2, Csrp3などSarcomere関連遺伝子群の発現低下が認められた。CI後、極初期には血流低下をトリガーとした筋のリモデリングに調節障害が発生し、徐々に筋のProtein synthesisとdegradationのバランスがdegradation有意となり、筋の不可逆的な崩壊が最終的に進むものと考えた。CI初期における遺伝子発現の変化を捉え、これをモニタリングすることで筋萎縮の前兆を見いだす可能性を示唆することができた。
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