定期的な運動は動脈硬化症の発症を予防する。しかしながら、この分子メカニズムは未だ不明な点が多い。オートファジーは細胞内の不要なタンパクや構造を排除するシステムであり、生体や細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしている。しかしながら、定期的な運動による動脈硬化症の抑制と大動脈のオートファジーとの関連は明らかにされていない。本研究では、運動による動脈硬化症の抑制と大動脈のオートファジーとの関連について検討した。実験には8週齢の雄性アポリポプロテインE欠損マウスを使用した。マウスは、運動群と安静群の2群に分け、運動群は自発走行運動を16週間行った。その間安静群は通常飼育した。運動期間終了後、血液、胸部大動脈および心臓を採取した。血液は遠心分離にて血清を単離し、コレステロールとサイトカインの濃度をそれぞれHPLCと抗体アレイにて評価した。胸部大動脈はウェスタンブロットにてタンパクの発現の評価に使用した。心臓は、OCTコンパウンドにて包埋後に薄切し、Oil red O染色にて動脈硬化の進行を評価した。動脈硬化層の形成は、安静群に比べ運動群の方が有意に小さかった。血中コレステロール濃度は、総コレステロール、LDLおよびVLDLが安静群に比べ運動群で低い傾向を示した。血中サイトカインは、測定した40項目のうち2種類のサイトカインが安静群に比べ運動群で顕著に低かった。オートファジータンパクであるLC3-II、Atg7とBeclin 1は安静群に比べ運動群で低い傾向を示し、オートファジーの流動を示すp62は安静群と運動群の間に有意差はなかった。これらの結果は、運動による動脈硬化症の抑制が運動によるオートファジーの抑制と関連する可能性を示唆している。
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