研究課題
本研究プロジェクトでは,子どもの発達過程において,原初的な超自然的存在を感じることが,向社会性を育むために重要な機能を担っているという仮説にもとづき,それを小学生を対象とした心理実験とfMRI実験により検証することを試みている.本年度は,この仮説を検証するために,実際には存在しないエージェントのイメージが子どもでどのように立ち上がるのかを調べる予備実験を行った.特に様々な宗教儀式において,超自然的存在の知覚を高めるためにリズムが用いられることが多いことを鑑み,リズムを用いた実験系を構築した.具体的にはランダムドット画像に浮かび上がるパレイドリア錯覚(無意味な刺激に生き物などがみえる現象)を用い,被験者と他のエージェントのリズムを同期させることでこの錯覚の効果が強まること,特にリズムが同期している際には被験者は動物の映像をランダムドットの中に見出す傾向があることを成人と小学生を対象とした心理実験により示した.また見えたものを実際に描画してもらうことで,それぞれに被験者にその被験者固有の様々なエージェントが立ち上がってみえることを示すこともできた.さらに小学生を対象としたfMRI実験も行い,この課題が十分に子どものfMRI課題として成り立つことを示すことができた.以上,平成26年度は子どもに存在しない様々なエージェントを知覚させることを可能にする画期的な実験課題を構築することができた.今後はこの課題を用いて,子どもの超自然的存在の知覚能力の発達過程を心理実験とfMRI計測により調べていきたいと考えている.
2: おおむね順調に進展している
本来は既存の宗教オブジェクト(鳥居)を用いた実験計画を想定していたが,予備実験を重ねることで,鳥居では望ましい結果が得られないという結論になり,パレイドリア錯覚を用いた実験計画に方向転換をした.ただし研究の一貫性は保たれており,パレイドリア錯覚を用いた成人での予備実験(心理実験・fMRI実験)も順調に行得ており,研究は順調であると言える.
成人の心理実験,fMRI実験はすでに完了しており,子どもの心理実験,fMRI計測の予備実験も順調である.平成27年度はこの方向で研究を確実に続けるとともに,子どもの規範行動が子どもがみたエージェントによってどのように変化するのかを調べていきたいと考えている.また文化比較的なアプローチもとりいれることで,このような超自然的存在の知覚がどのように宗教文化と結びつくのかについても明らかにしていきたい.
研究課題の開発に今年度は力を入れたため,想定よりも被験者謝金を用いなかったため,来年度に研究費を計上した.
主に子どもfMRIの実験謝金,成果発表の旅費などに使用する.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cortex
巻: 58 ページ: 289-300
doi:10.1016/j.cortex.2014.03.011