研究課題/領域番号 |
26560416
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉村 伸一郎 広島大学, 教育学研究科, 教授 (40235891)
|
研究分担者 |
倉盛 美穂子 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (90435355)
平田 香奈子 鈴峯女子短期大学, 保育学科, 講師 (00435356)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 保育 / 養育態度 / 遊び / 怪我 / リスクマネジメント |
研究実績の概要 |
子どもの心身の発達において,スリルのある遊びは必要であると考えられている。しかし,国内では大坪他(2011)が,リスクにチャレンジすることが危険回避能力の発達と関係することを明らかにしているものの,保護者が子どもにスリルある遊びを許容することが,子どもの心身の発達のどのような側面にどの程度の影響を与えるのかに関しては,検討されてこなかった。そこで本研究では,保護者のかかわり方の影響が特に大きいと考えられる幼児期において,両者の関係を調べることを目的とした。 3歳から6歳の幼児を持つ保護者,父親500名(平均年齢40.9歳),母親500名(平均年齢36.8歳)の合計1,000名を対象に,インターネット調査を実施した。スリルのある遊びに対する親のかかわり方の測定には,上山他(2015)が作成した保護者用のリスクマネジメント評価尺度から,管理に関する2つの下位尺度を用いた。幼児の発達の測定には,手先の器用さや身体能力など11の下位尺度,102項目から成る『東アジアこども発達スケール』(青柳他, 2013)を用いた。 リスク管理尺度の得点と11の発達の下位尺度の得点との月齢を統制した偏相関を算出した。その結果,保護者のリスク管理と幼児の発達との間で,最も強い関係が見られたのは,父親と身体能力の間で,父親が,怪我をする可能性のある遊びをさせなかったり,子どもが少しでも怪我をしそうな場合は遊びを制限したりする程度が高いほど,子どもの身体能力が低く,その反対に,父親が,安全に遊べるかどうかは子ども自身に判断させるといった程度が高いほど,子どもの身体能力が高いことが示された。母親に関しては,怪我をする可能性のある遊びをさせなかったりする程度が高いほど,子どものことばの表現や,集団活動,社会的ルールの理解の発達の程度が低いことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の早い時期に,保護者1,000名を対象にインターネット調査を実施する予定であったが,そこで用いる他の研究者が作成した5つ尺度のうち,3つは数日以内に利用の許可を得ることができたが,青柳他が作成した『東アジアこども発達スケール』と田研出版の『TK式こどもの社会性発達スケール STAR』に関しては,交渉に2ヶ月以上かかった上,『STAR』に関しては,著作者と出版社の考えが異なった。そのために,インターネット調査の実施が平成29年の1月となり,計画全体が遅延した。
|
今後の研究の推進方策 |
保護者を対象にしたインターネット調査を,繰り返しの挑戦や粘り強さなどを含む自己コントロール力などの項目を追加し,継続して実施する。また,保育者を対象に,リスクマネジメント評価尺度と『東アジアこども発達スケール』を実施し,保育者の関わり方と子どもの発達との関係を検討する。さらに,保育者には,リスク・ベネフィット観尺度に対して,自分の考えだけでなく,保護者全体の考えや園の方針についても評定してもらう。また,三者のいずれかの間でズレが感じられる場合は,どのように対処しているかを記述してもらう。そして,三者のズレの程度の分析とともに,調整過程のモデル化を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
保護者を対象にしたインターネットの本調査,その後に実施予定であった保育者の調査,そして,これらの研究の投稿料を本年度の予算として計上していたが,調査の許諾の遅延等により,いずれも行うことができなかったため,その分が次年度の使用額として繰り越しとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
下記の3点で使用する。(1)保護者を対象にしたインターネット調査を,繰り返しの挑戦や粘り強さなどを含む自己コントロール力などの項目を追加し,継続して実施。(2)保育者を対象にした調査の郵送費とデータ入力費。(3)これまでの研究を英語論文に投稿。
|