研究課題/領域番号 |
26560424
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
嶋田 容子 同志社大学, 研究開発推進機構, 日本学術振興会特別研究員(RPD) (60422903)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳児 / 幼児 / ASD / 発声 / 私的言語 / 遊び |
研究実績の概要 |
1.ASD児の独言観察:定型発達の幼児における私的言語には、課題の遂行を助ける自己制御機能があるとされる。しかし、ASD児の私的な発言(本研究では独言と称する)には同様の機能がないとされ、その独自の機能はほとんど検証されていない。ASD児には独自の行動特性があるため、定型発達児とは表面上類似であっても異なる機能をもつ可能性がある。ASD児の独言の機能を検証することは、理解と適切な支援、また定型発達の独言の別側面を理解することにつながる可能性がある。この研究では、養育者の協力を得て、ASD児の独言を2週間程度連続して撮影し、音声と行動の関係を分析した。その結果、ピッチの変化・フレーズや歌詞の変化が、遊び行動の転換と同時生起する場合が多くのビデオ事例でみられた。この結果から、ASD児の独言は一連の動作や遊びのテーマの転換と密接に関連する可能性が示された。定型発達児とは異なる、ASD児にとって有効な機能をもつ可能性をさらに検討する必要がある。この研究の結果は、International Congress of Psychology、日本発達心理学会等にて発表した。
2.ASD児および定型発達児の独言に関する実験研究:先行研究の多くが、定型発達幼児の私的言語が、言語による自己フィードバックによって機能を果たすことを示唆している。しかし、非言語的な発声や目的に関与しない発声にも、感情的なエネルギーの放出などによる効果が予想される。発声によるストレス状態の変化を、心拍と発汗のウェアラブル計測器を用いて調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ASD児の家庭における自然な発声を記録した。本研究では、自然に生起する行動を分析対象としたこと、音声分析や発話内容分析だけではなく並行する行動を分析したことから、先行研究の指摘とは異なる側面を見出すことができた。独言に関する先行研究の多くが言語に基づく論理的思考を重視するのに対し、本研究は当初から原初的な音楽行動としての機能がASD児においては有効と仮定しており、その仮定を支持する結果が得られたと言える。また、発声中に生理指標を計測する技術の有用性は、研究開始時点では予期していなかったが、学会参加等を通じて技術に関する新しい情報を得たため、現在これを用いて実験を継続している。発声による情動的な自己制御という本研究の視点が、行動・音声分析以上に直接的に示すことのでき、当初の予想以上の成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
独言中の情動的な変化をとらえるため、心拍・発汗といった生理指標を用いた実験を継続する。乳児の独言ビデオデータの収集を完了し、ASD児・定型発達児における独言の機能と通じる傾向の有無を分析する。結果をまとめ、独言の機能のあらたな整理・分類を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の前半は育児休業により研究活動を休止していたため
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次年度使用額の使用計画 |
あらたなデータ取得のため、生理指標計測に関わる機器・遠隔から音声を録音する機器等を追加購入する。実験協力のため謝金を使用する。また、ASD児の療育施設におけるデータ取得、および日本心理学会・日本発達心理学会等の学会発表のため旅費を使用する。
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