生活環境における独言の発現の様相を探るため、保育施設におけるフィールド調査を実施した。保育者の協力により、日常環境における独言の様子を写真撮影・テキスト記録によって、収集した。収集された独言の内容は、Bark(1998)などの先行研究を踏まえて分類したが、本研究では言語的発声内容の明瞭ではない独言も分析対象とした。そのため既存の分類に該当しないものも観察され、それらに関してはあらたな分類を検討した。 なお上記の調査では、実践者との協働という形により、実践と相互に影響の強いアウトリーチをおこなった。最終年度は、保育現場の協働者との連続的な研修会と共同調査を実施し、基礎研究と保育実践の連携への基盤を構築した。本研究の成果は、実践者との共著として、同志社大学赤ちゃん学研究センター紀要(嶋田,百成,常光,宮嵜,2018)において発表したほか、保育環境における聞こえに関して日本音響学会誌(嶋田,志村,小西,2018)、保育の音環境に関して音楽教育実践ジャーナル(嶋田、2018)などに発表した。 また、独言の音声的特徴と発達的変化について、前年度までに縦断的に収集したビデオデータの分析をおこなった。複数の事例において、発声のリズムパターンあるいはメロディーの変化が、変化の前後にみられた遊び行動や運動の変化と近い時期に生じたことが示された。この独言の変化と行動の変化の関連性は、昨年度に収集・分析した自閉症児の独言にみられたものと類似していた。ビデオデータの分析は現在も継続中である。
|